新しい出来事

「帰ったぞー!!!」

「森から“冒険者”が帰った!!」

 西の検問所をぬけ、馬車がすすんでいく、そこには、死者を乗せるはずだった荷台にのっている負傷した冒険者の姿。人々は彼らをとりかこみ、野次馬となって口々に尋ねる。

「何があった?」

「任務はどうなった?」

「死者は?」

 脇をあるくヘリオが答えようとすると、荷台からケルピーに吹き飛ばされた冒険者は、負傷しながらも苦い顔をして答えた。

「大丈夫だ、負傷者は3人、ケローネ、旅の人“エイブス”、そして私だけさ、回復魔法を使えばすぐよくなろうて」

 ヘリオは、三人を病院に運ぶと、すぐに冒険者ギルドにむかった。ギルド長のスレイは、しゅっとした好青年で、左腕がなかった。ヘリオを見るなり、彼をギルドの中に招いて、何があったか話してほしいといった。ヘリオが、コクリと頷くと、その悲し気な顔をみて、優しく肩をだき、奥の応接室へと案内するのだった。


「君が?ケルピーを?それもそんな巨大なケルピーを?信じられない、僕を騙しているのではあるまいね?」

 すると、ヘリオはカバンを腰のカバンをほどいて、中から光る結晶体をとりだした。

「これは……」

「“魔物の残骸”はエイブスが隔離しておきました、ギルドであとで人をやるようにと言伝です……」

「こんなきれいな魔晶玉はみたことがない」

 目をまん丸にして、スレイは手を広げてそれに手を伸ばした

「それに、なんていってもこの大きさ、AAA、いや……Sクラスの化け物を倒した証拠だ」

 巨大なひとつの魔晶玉、それはエイブスが“守護使者”と呼んだものの魔晶玉だった

。スレイは、それをじっとみていると、突然苦しみだし、ブルブルとふるえた。

「うっ」

「大丈夫?」

「ああ、“共鳴”だ」

 ヘリオも聞いたことはある。魔晶石は、“寿命”をもち、武器や防具に加工することができるし、そのまま魔力を供給するエネルギー資源になるのだが、それにそのままふれると、体に異常を起こすことがある。特に高レベルの冒険者は、高度なスキルを扱うせいか、そうした現象が多いのだという。

「それで?どうする?ギルドとしてもこうしたことは異例だが、モノがものだ、規則的には、ギルド登録のない人間に報酬は渡せないが、こんな協力なものを手に入れたら、そうもいってられない、君が必要なら、ギルド登録して、今回の報酬は全部君のものへ……」

 ふと、スレイはヘリオに目線を移す、ヘリオが暗い顔をしているのをみて、さすがに察したとみえ、いった。

「すまない、こんなタイミングで言う事じゃなかったな、僕はよく人の気持ちがわからないとはいわれるが、まずは労りと報告だけにとどめておくべきだった、まあ、今のはおいおいの話だ、今日はゆっくり休んでくれ……」

 そういって、ちょうどドアをノックしてはいってきた、受付の女性からコーヒーをうけとると、ひとつをヘリオにさしだした。

「しは……」

「ん?」

 ヘリオが何かを言いかけたのを聞き逃したとおもい、聞き返す。

「私は、報酬はいりません……負傷した彼らと熟練の冒険者の報酬にしてください、私は無断で……森にたちいったのですから」


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