クロトの街の検問所 ドューラ ルビエン派 世界改変
クロトの街北方、イェル検問所にて。
「“規律を乱すもの”が乱入した恐れがあります」
「なんですって?」
「警備兵が、微弱な、魔女の魔力を感じました」
検問所脇の小屋のなか、ピッチリと整えられた白い服をきて、祭服のような白い帽子と杖をもった老人がちょうど、検問所を訪れていた。彼はこの街で一番偉い神官、“ドューラ”である。彼は兵士の言葉を聞き、どういうつもりか体を震わせた。
「ほおってはおけませんね、内々に処理しましょう」
「は!!」
兵士が答えるやいなや、別の兵士がかけこんできた。
「ドューラ様!!ここへおいでと聞き、急いで知らせをとまいりました」
「前置きはいい、要件はなんだ?」
「たった今、クロトの街南西にて“魔女”が出現したとの情報がたった今」
老人“ドューラ”は、白髪が頭の両サイドにある、ふくよかな顔をした、目のクマのひどい人である。彼が突然顔を真っ赤にして、両手の拳を強く握った。
「“厄介な”」
遅れてきた兵士は、顔を青ざめた。この“ドューラ”は魔女狩りにて名前をはせた男である。
「この平穏な街まで、私の老後の楽しみを奪ってまで……」
この男は、ルビエン派に属する神官である。ルビエン派は、“教会の教え”に対して、伝道師“ルエル”の言葉“人は人を信じよ”を信仰する宗派で、人間と魔物の対立にたいし中立で魔王の残軍に対する穏健な姿勢で知られるが、しかし、詳しい人間は知っている。ルビエン派は、人々に対してその姿勢を示しているだけであり、実質のところ過激な派閥であることを。
兵士は、神官ドューラが何をいうか顔色を窺っていた。しかし突然、彼は無表情になったかとおもうとにっこりと笑った。そして兵士に何事か耳打ちをした。すると兵士は余計に震え上がり、そそくさと用意をして、またどこかへと駆け出したのだった。
ドューラは肩を震わせ、杖をにぎりしめ、
(町の平穏は私が守る)
と誓ったのだった。
一方そのころ、ネーラは、のんきに町長宅で、お茶をもらっていた。町長はしゃがれ声のおばあさんで、なんとかネーラをなだめようと躍起になっていた。
「ところで、お前さんが燃やした人は、どこのどういう人なんだい?遺体は渡してくれないかい?」
そういうと、ネーラはバッグを突然机の上に放りだした。そこから塵の入った瓶をとりだすといった。
「これよ」
「は?」
そのビンの中には木の燃えカスのような塵しかはいっておらず、街長は拍子抜けした。
「人は燃やしていない、“まだ”ね」
そういうと、ネーラは出されたお茶をのみほして、そして、そのお茶の中に少しの振動を察知すると突然立ち上がり、いった
「くる!!」
街長は、何がくるんだい?と、お菓子をはこんでいた手をとめふりかえると、そこにはもうネーラの姿はなかった。
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