閃光

「あああああああっ!!!!!」

 怒りの感情を強くもったのも叫んだのも初めてだった。頭は冷静さをもっていたが、体は、自動で感情を高ぶらせた。

《ジュゥウウッ》

 素早くかけぬけていく、その右手に剣をもち、ゆっくりと引き下ろしていく。

《ジュゥアアアアアア》

『グウゥウオオオオオオオオォオオオオン』

 怪物の雄たけびが聞こえる。それは洞窟にとどろく巨大な怪物の鼓動の音のような、脈動の音のようだった。切り裂いた箇所から真っ二つに、”守護使者”は引き裂かれていった。

《ズドォオオオオオン》

 守護使者を倒した。”倒した”という実感はあれど、生きものの命を奪ったことに、ヘリオはショックをうけていた。そして地面にへたり込んだ。勢いよく飛び散る先決は、エィミアの配慮によってヘリオをよけていた。

「ヘリオ、大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ」

 すぐそばで、ケローネが突然叫びをあげた。

「うわ、うわあああああ!!!」

「ケローネ!!?」

 ヘリオが近づいていき、慌てて全身を確かめる。

「大丈夫なの!!ケローネ!!ケローネ!!どこか痛むの!?」

 だが、ケローネは気が動転して、こんな事を口走っている。

「水使いの、水使いの!!!うわあああ!!!ひ、ひぃいい、水が、一人でに、一人でに!!怖い、怖いいぃいい!!!」

 そういって、ケローネは失神して倒れこんでしまった。


 その背後から、つかつかと、剣を杖にして"エイブス"があるいてきた。

「絶対絶命と思った、こんな事は何度だってないんだ……ケルピーだって、"守護使者"だって、古代の魔物だ、なかなかお目にかかれるものじゃない、だが、一番驚いたのは、お前さんがそいつを倒しちまったことだね」


 そういって彼女を見下ろして、ふと森の影から人影が姿を現しているのをみた。それはフードをかぶった魔術師らしき影で〝エイブズ〟は彼女に、会釈をした。その様子をみたヘリオが振り返りいった。

「誰かいるの?」

 しかし、そこにはもう人影はなく、エイブスが答える。

「いいや、誰も……安心しろ、敵対者の気配はない」

「……」

 エイブスがしゃがみこみ、ヘリオが抱えているケローネに手を伸ばす。

「問題ない、多分……トラウマが再発したのだろう」

「トラウマ?」

「知らないのか?……まあ、たしかに、普通に暮らしていたらしらないだろうか"大先生"の過去など」

「??」

 ヘリオは、冷静にケローネの魔力をみて、乱れもない事からにっこりほほえみ、そして、意識を失ったのだった。












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