死闘

「な、何をいいだすの?エィミア!」

『あいつは、高度に魔力を操作できる、私たちが吸収しようとしたとき、私たちがわずかに放った〝予備魔力〟をみて、ひっこめた、けど私たちがためらった瞬間また“粘液”を張った、"守護使者"が何かしらないけど、普通じゃないわ』

「でも!!負傷者がいるのよ!!それにケローネだって!!」

『ヘリオ、あなた"絶望"は慣れているでしょ?あなたの魂は、絶望に耐性がある、私は水の女神に使え、あなたの誕生をまっていた……この世界の"転生原理"を変えるために』

「なっ」

 ヘリオは、逡巡した。たしかに、自分は絶望になれている。両親が死んでも何も思わなかった。けれど、けれど……突然、ケローネの笑顔が自分に語り掛けてくる映像を思い出した。そして、ケローネのその瞳の中にある“何らかの期待”に応えたくなったのだ。

「私が死んでも、彼は……」

『!?何を言い出すの!!ヘリオ!!』

 ヘリオは、立ち上がり、叫んだ。

「私は!!」

 しかし、その時、巨大なケルピーの背後に人影が立っていることに気が付いた。そしてその影をよくみて、絶句した。

「ヘ……ヘリオ……」

「嘘、やめて」

「逃げるんだ!!ヘリオ!!ここは俺にまかせて!!お前は、生き延びろ!!お前は俺の、太陽だ!!」

 ヘリオが叫んだ。地面に紙をまき炎の魔法陣を展開し、現れた炎の玉は”守護使者”ケルピーに降り注いだ。しかし、ケルピーはそれを全く意にかえさなかった。

『ヘリオ!!ヘリオ!!聞いて!!』

 肩をフルフル振るわせて、エィミアの声もきこえていないようで、立ちすくむ。

『ふん、これでいいじゃねえか姉御、俺は自由が好きだぜ、こいつなんてどうだっていい』

《ドサッ》

『ヘリオ!!早く逃げなさい!!ヘリオ!!!』

 叫ぶエイミァにようやくきづいたのか、顔を右に傾けながら、ヘリオはいった。

「違うのよ……」

『何が違うのよ!!』

「私、あなたが何をいいたいのかわかっている、でも、認めたくない」

『いいから、早く立ちなさい!!彼の犠牲を無駄に……』

「違う!!私……こんな事、想像もしてなかった、私……大切な人が目の前で、死にそうな目にあう、それを想像して……動けないのよ」

『!!』

「逃げることも、進むこともできない、私は……私は、こんなに弱虫になってしまったの??」

 ヘリオは、自分の両手をみつめる、がくがくと震えている。"守護使者"とケローネの戦う音が聞こえる。

『ヘリオ……よく聞いて』

 振り返り、エィミアを見るヘリオ、エィミアは、真剣なまなざしで、宙にうきヘリオを見下ろしていた。









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