旅人
腰に剣を収め、男のわりには長い方までの前髪をゆらしながら、リュックを背負いフードをかぶった黄色いコートの旅人らしき男が村に入る。その後ろを、ロッドをもった同じく灰色のフードをかぶった軽装の女がおいかける。
「じゃあ、いっちょやるか」
男は、振り返りニコリとわらう。
「ユラン……くれぐれも」
「大丈夫だって、無茶はしないよ」
「そうでなくあの、私はあなたの力量をわきまえて……そういっているのです」
「わーったよ、あんたも、無茶しないようにな、ネーラ」
「わ、わかっています、私の問題は、ひとつだけですから」
ユランは、彼女の頭にてをのばした。ネーラは、それだけで驚き、距離をとった。
「なななな、なんですか!!」
「何って、頭をなでるだけさ」
フワフワとなでられると、フードが半分さがった。かわいらしいボブヘアーに、猫目、泣きボクロのあり、凛々しくさっぱりとした、まるで蝶のような美しさをもつ女性の顔が現れた。
「ででで、ですから、あなたは“特別な人”ですから、こういう事を許してはいるものの、人前で」
「人って、どこにいるの、人って」
「私たちはいつも監視されています!!き、気を付けてください!!だってそうでしょう?私たちは」
「しっ」
口に手を当てると、ユランは歩きだした。
「じゃあまたあとでな、この街に“混乱を起こしたあとで”」
ユランが去ると、ネーラはフードをまた深くかぶってつぶやいた。
「なんなんですか」
昼すぎごろ、冒険者ギルド前で、ケローネを含んだ調査隊5人ほどが用意を進めていた。それを影で、ヘリオはみていた。ふと、背後に気配を感じて振り返ると、先ほどの男ーユランーが同じ姿勢でギルドをみていた。
「なっ!!」
ヘリオは、身を守ろうと背中の愛用の剣に手をかける。なんてこともない、刃も入ってない練習用の鋼の剣をとりだし男の首にあてようとした。が、男はそのずいぶんまえ、確かにヘリオが手に取ったとおもった剣の柄をヘリオの手の甲を抑えて、制止していた。
「何なんだ、あんたは!!」
男は、ギルド証をみせる。フォームリングから投影されるホログラム映像だが、フォームリングの加工は違法であり、高度な技術が使われているため十中八九本物である。
「何の用、あんた、冒険者なんでしょ?」
「いやあ、俺“冒険者育成”に興味があってさ、あんた、本当はすごい奴なんじゃないか?」
「は?何が?水スキルを授かったばかりの子供だし、最弱スキルよ」
「いーや……あんたは隠しているね……例えばあんたは……自分の人格の前、自分の記憶の後ろにもう一つの“顔”を隠している……そうだな、あんたは……自分を偽っている」
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