1:第4話 学園最強お嬢様からの、突然の宣戦布告

 学園生たちが左右に分かれ、中央から姿を見せた人物は、鞘に収まった一本の長剣を携える、令嬢れいじょう風の女性だった。一瞬、また〝伝説級レジェンド〟の〝力ある武器オーバー・ウェポン〟の化身けしんかと思う程の見目麗みめうるわしさだが、そうではないらしい。


「あ、あの人まさか、《聖剣クラス》でも最上位って噂の剣士?」

「確か二学年度生に、〝伝説級〟の《聖剣》に選ばれた先輩がいる、って聞いたことが……」

「う、ウソだろ、ニュウ様じゃねぇか。ウソみてぇに強いって噂のっ……」


 在学生だけでなく、新入生にさえ知られているほどの有名人らしい。しかしそんな麗しの有名人は、何やら不満があるらしく、文句を口にしてきた。


「この学園は、人類の守護者たるべき人材を育成する機関で、学園生達は例外なく日々努力し、より強力な武器を従えるべく訓練に励んでいますわ。にもかかわわらず未熟な新入生が、〝伝説級〟の……しかも聖魔の両剣を手にするなんて、誰も納得しませんわ! それでも、アナタがどうしても、〝伝説級〟の武器を己の物にしたいと言うのなら」


 次々と言葉を並べ立てていた彼女が、結論とばかりに、一際大きな声で叫ぶ。



「《聖剣クラス》最強の実力を持つ、このニュウ=シグリア様を――〝実戦試験〟によって、打ち倒してごらんなさーいっ!」



 ビシッ、と指差してくる先輩、ニュウと名乗った彼女に、ライカは呆気あっけに取られて何も言えないでいた。が、沈黙を肯定と勝手に受け取ったらしく、彼女はそのまま背を向けてくる。


「では、準備ができ次第、屋外おくがい闘技場にいらっしゃい。逃げるんじゃないですわよ、新入生さん。……そして」


 首だけをこちらに向けてきたニュウが、鋭い視線を向けたのは、ライカにではなく。


「《至高の聖剣エクスカリバー》……貴女が最強とうそぶけるのも、今日までですわ。ふん!」


 エクスを一睨ひとにらみし、今度こそ、立ち去って行った。


 そんなニュウを見送りながら、ライカはエクスにたずねてみるが。


「え、えーと、エクス。あのニュウ先輩とは、知り合いだったりする?」


「へ? いーえ、話したコトもないはずだけど?」


 特にエクスは気にする様子もないが、一方、気弱な性格のリルはというと。


「うぅ、何だか、怒りっぽい人……怖い、です……」


 立派な銀色の尻尾を、へにゃり、弱々しく垂らしていた。


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