7日 雪のガーランド

 銀色の星は、ひとまずツリーに吊るされた。

 期待に瞬く星を見て、マリちゃんは金星が出来るだけ早く見つかることを祈った。


 そうして12月7日。

 マリちゃんは、今日も誰よりも早く起き出し、急いでカレンダーを開けに行った。

 紙とキリトリ線で出来た扉が、ぱつッと音を立てて開く。


 中には、雪の結晶の形をした飾りが残されていた。

 しかし、反対の壁にはやっぱり穴が空いている。


「外の様子だけ見て、出なかったのかな」


 マリちゃんは雪の結晶を指で持ち上げようとして、微かな手ごたえを感じた。

 よく見ると、結晶の先に紐が通されていて、それがピンと張っているのだ。

 さらに、紐には等間隔でさまざまな結晶が並んでいて、その先はカレンダーの穴の外へ繋がっていた。


「この先はどこだろう」


 マリちゃんは、改めて穴を覗く。

 その先は、なんと幼稚園に繋がっていた。


『あ痛、いたたたた』


 どこかから、弱々しい声がする。

 けれど、見渡す限り園児ばかりで全く様子が分からない。


「ひとまず、紐をたぐってみれば分かるかな」


 マリちゃんは、手に持った紐を軽く引っ張ってみた。すると、手元から園児に向かって、紐はピンと伸びた。


『ホントに痛い。身体千切れる』

「見つけた」


 園児の手元から、紐が伸びていた。

 雪の結晶飾りは、本当は長い雪のガーランドだったのだ。


「あー、飾り取っちゃったの! 駄目よもー」


 偶然、保育士が駆けつけてきて、園児から紐の端を取り上げようとする。


「チャンス!」


 その一瞬で、マリちゃんは紐を一気にたぐり寄せた。


『うわ、身体捻れる! 乱暴!』


 ガーランドは千切れることなくマリちゃんの手に収まった。

 身体を捻って、ガーランドは訴える。


『ひどいよ、人間ってのは。

 はみ出ちゃった尻尾掴んでカレンダーから引きずり出すし。紐使ってあやとりしようとするし、乱暴だ』


 ガーランドは紐の端を垂らし、不平を漏らす。

 マリちゃんは、紐が捻れないよう気を遣いながら、ガーランドを飾りつけるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

紙とキリトリ線の扉たち スミレ @sumi-re

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ