5日 鳴らないベル
「わ、光った」
『光るプレゼントなんて、これは贅沢モノだね』
『マリちゃん、夜は消してね。
寝れなくなっちゃう……』
プレゼントの光を間近で浴びて、人形が眩しそうにしていた。
そうして12月5日。
マリちゃんは、今日も誰よりも早く起き出し、急いでカレンダーを開けに行った。
紙とキリトリ線で出来た扉が、ぱつッと音を立てて開く。
やっぱり、中は空っぽだった。
壁に空いた穴を覗き込み、マリちゃんは目を凝らす。
「教会だわ」
真っ先に見えたのは、巨大なステンドグラスだった。真っ白な空間の中に、木製の長椅子が几帳面に据えられている。
その奥には長机が2つ置かれ、それぞれ真紅のクロスを掛けられていた。
そしてその上に、ハンドベルが大きさ順に、お行儀よく並んでいる。
『あっ、マリちゃん』
その中で1番小さなハンドベルの隣に、さらに小さなベルがあった。正しくは、ベルの飾りだ。
「見つけた!」
『私ね、穴が空いたからマリちゃんかなって外に出たんだけど、知らないとこだった!』
ベルは、身体を震わせた。
『カレンダーに戻ればいいの?』
「うん!」
『この子たちも一緒?』
横のハンドベルを示されたので、マリちゃんは首を激しく横に振った。
「違う違う! それ、よその子!」
『残念』
ベルは、身体を揺らしながらカレンダーに戻ってくる。
マリちゃんの手の平で転がりながら、ベルは言った。
『私はこうしても鳴らないけど、あのベルたちは音が鳴るらしいの。
どんな音か聞いてみたかったなぁ』
「うーん」
マリちゃんは少し考え、それから駆け足でリビングの壁に向かった。
「えっと、カレンダー……」
『カレンダーはあっちだよ』
「アドベントカレンダーじゃなくて、こっち」
指差したのは、紙のカレンダー。
今週の土曜日に赤マルを付けて「クリスマスマーケット!」と書かれている。
「この日、ハンドベルのコンサートもあったはずなの。一緒に行こ!」
「わあ! もちろん!」
ベルは身体を弾ませ、応えるのだった。
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