4日 空箱のプレゼント

『あと半月以上干されてろって?』

「干してない。飾ってるの」

『けっ。約束だからな。ちゃんと履かせなよ』


 マリちゃんと靴下が言い合っているのを、他の飾りは肩身狭そうに聞いていた。


 そうして12月4日。

 マリちゃんは、また誰よりも早く起き出し、急いでカレンダーを開けに行った。

 紙とキリトリ線で出来た扉が、ぱつッと音を立てて開く。


 やっぱり、中は空っぽだった。

 壁に空いた穴を覗き込み、マリちゃんは目を凝らす。


「どこだろう。お店みたいだけど」


 その先は、お店の中に繋がっていた。

 ショーウィンドウには、巨大なテディベアが飾られている。

 棚には、流行りの玩具おもちゃがひしめき合っている。


「あっ。“おしゃれドールシリーズ”だわ。

 新作のドレス着てる」


 ここは玩具屋さんの中だった。

 そして、目当ての飾りは探すまでもなく見つかった。


『どれもこれも大きいなぁ。この中に入るかな』

「見つけた!」


 商品棚の下で、プレゼントボックスの飾りがカタカタと音を鳴らしていた。


『マリちゃんだ。

 ごめんね、もう少ししたら戻るからさ』

「何してるの?」

『この中に入るプレゼントを探してるんだ。

 今はまだ空っぽでしょ』


 プレゼントボックスが、カタカタと鳴る。


「入るって、あなたには入らないでしょ?」

『でも、箱には中身を入れるもんでしょ?』

「中身ならもう入ってるよ」


 マリちゃんが、プレゼントボックス自体を指差すと、またカタカタと鳴る。


「その中にはね、電気を通す仕組みが入ってるの。だから、あなたは光ることができるの」

『うーん? つまりこれは、プレゼントボックスにはなれないってこと?』

「ちょっと勘違いしてるわ」


 マリちゃんは、くすくす笑う。


「あなた、カレンダーの箱に入ってたでしょ。

 わたしは、あなたを取り出して笑顔になる。

 つまり……」

「そっか! ぼくは“プレゼントボックス”じゃなくて、“プレゼント”だったんだ!」


 プレゼントボックス改めプレゼントは、一層カタカタと音を鳴らしていた。

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