2日 青い玉のビジュー

「明日また早起きしてくるわ。

 次の扉を開けないと、何も分からないし」

『今ここで全部の扉を開けたら?』

「だめ。扉は毎日1つずつって、お母さんが言ってたから」


 人形に向かって、マリちゃんはきっぱりと言い放った。


 そうして12月2日。

 マリちゃんは、再び誰よりも早く起き出し、急いでカレンダーを開けに行った。

 紙とキリトリ線で出来た扉が、ぱつッと音を立てて開く。


 中は空っぽだった。

 奥の壁は穴が空いていて、そこから光が漏れている。


『ああ、やっぱり』


 ツリーに吊るされながら、人形はおいおい声を上げて泣いた。


「しっ。静かに。お母さんたちが起きちゃう」


 人形を制しながら、マリちゃんは扉の先を覗きこむ。

 穴は扉の形に空いていて、ふちにキリトリ線の跡がある。

 マリちゃんは、できる限り目を凝らした。

 その先が見えた途端、マリちゃんは思わず頓狂とんきょうな声を出した。


「道路だわ!」


 穴の先は、なんと外の景色に繋がっていた。

 目の前には道路が広がり、脇を見れば、アパートや家が見える。

 マリちゃんがキョロキョロしていると、道路の隅っこに何かが光るのが見えた。

 青くてキラキラした玉のビジュー。マリちゃんには、覚えのあるものだ。


「ツリーの飾り、あった!」


 喜ぶのもつかの間。玉の近くに、影が忍び寄った。

 それは、黒くてもじゃもじゃした、毛玉みたいな見た目の猫。

 それを見た瞬間、マリちゃんはリビングを飛び出した。


『マリちゃん!』

「飾り見つけた! 取りに行ってくる!」


 マリちゃんは慌てて家を出た。

 住宅街の中を右へ左へ、迷わず走る。


「こらっ、だめ!」


 声を荒げた先には、あのもじゃもじゃの猫がいた。ミイちゃんは素早く逃げ出していく。


『ひぇぇ、助かったぁ』


 残された青い玉が、弱々しく転がる。マリちゃんはそれを、優しく拾い上げた。


「見つけた! お家帰ろうね」

『マリちゃん!』


 青い玉は、手の平で機嫌よく転がる。家族が起きだす前にと、マリちゃんは駆け足で家に戻った。

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