第9話 酔いどれエルフのファミレス呑み・後編

「ディアナさん、私はベタにコーラで赤ワインを割ることにするぞ!」

「カリモーチョね。じゃあ私は……キティにしようかしら?」

 

 キティはジンジャエールの赤ワイン割。後半戦を組み立てる二人の選んだ最初のおつまみは! 同時に指を指したのは……

 

「「牡蠣フライ!」」

 

 タルタルソースがたっぷりとついて、ファミレスながら満足できる大きさのそれに二人の口の中はじゅわっと唾が溜まる。喧嘩をしない四個という素晴らし個数にセラさんとディアナさんはまずはお一つ。

 

「うんまぁあああ! これはぱないな? ディアナさん?」

「それぇ! 私が言ったほうがいい台詞じゃないの? 吸血鬼的に? でもほんと美味しい。お酒に合うわぁ!」

 

 二人が作ったオリジナルカクテルで喉を通すと、もう一つのカキフライは備え付けのソースで食べてみる。赤ワインベースのカクテルだとタルタルソースより、濃いウスター系ソースの方が合うらしい。

 

「ちょっとヘビーなのばっかり行ったから、サラダでも食べない?」

「むふー、私は一向にかまわーん! というか、ヴァンパイアのディアナさんがサラダとか言うと新手のジョークみたいに思えるな!」

「ちょっとー! セラ、酔いすぎじゃない? エビとフルーツのサラダでいいかしら?」

 

 親指を立てるセラさんは、席を立つと、飲み物を入れに行く。次なるワインの割材調達という事なのだ。その間にディアナさんはチーズインハンバーグの人気盛りを注文。様々な具材が載っており、いわば二人からすればおつまみの盛り合わせと言える。セラさんが戻ってきたら自分も割材を調達しようと思っている。

 

「お待たせだディアナさん」

「あら、それってカルピス?」

「あぁ、この二つを合わせてもカクテルになるんだ! 名前はなんだっけ……」

「ロマンチックハーモニーよ。ふふっ、私も同じ物にしようかしら?」

 

 そう言って席を立つディアナさん、腰回りが妙に艶っぽい。セラさんはアルコールに侵されている頭でもかつて死合ってきたヴァンパイア種を思いだす。いずれも人間やエルフである自分とは相入れない存在だった。それがこの世界ではどうだろう? 日夜汗をかいて働き、苦手な日の光の下を走り回り、そしてファミレスで一緒に食事をとっている。

 

「勇者が魔王を討伐せずともファミレスがあれば皆平和になれたんじゃないか?」

 

 と引くくらい馬鹿馬鹿しい事を口にするセラさんに戻ってきたディアナさんが、

 

「平和にはならないけど、私たち社会の歯車のストレスを軽減できるだけの力はあるわね。あっ! サラダ取り分けてくれたの? ありがと」

 

 油物が続いた中で入れるサラダのアッサリ感はお酒が進みよく食べられる。甘いロマンチックハーモニーと合わせて、デザード感覚である。

 これら箸休めは恐らく次にくる料理が二人の胃袋の許容量を考えても最後のおつまみになるから……

 

“お待たせしました!“

 

 チーズインハンバーグの人気盛りが到着。二人はごくりと喉を鳴らす。これは食べられるだろうか? お酒の力を借りねば完食は難しいだろうなと二人は頷く。

 

 そして、タッチパネルのビールを二人でピッと注文を入れた。赤ワインは残り一杯分程、ビールが到着すればこれで決めるつもりなのだ。セラさんが立ち上がろうとした時、ディアナさんが手を前に出して、

 

「私が入れてきてあげるわ」

 

 とジンジャエールを二杯入れて戻ってきた。唐揚げ、目玉焼き、ソーセージ、ハッシュドポテト、ミックスベジタブル。それらをおつまみにビールをグイッと半分程飲み干す。

 

「終盤のビールもおつなものね」

「本当だな! 美味い! ところでディアナさん、どうするんだ?」

「ガスト飲み、究極のカクテルは、シャンディガフ・ロゼよ」

 

 ビールとジンジャエールのシャンディガフに赤ワインの酸味を効かせたそれ、本来度数が落ちたハズのシャンディガフに赤ワインで度数を引き上げてある。

 そんなシャンディガフ・ロゼでいただく最後のおつまみは……

 

「チーズインハンバーグ! しゃいこぉおお! こんなの食べたら人間の血なんてもういらなくなるわよぉ! んんっ! シャンディガフ・ロゼも超あう!」

「おぉ! これほんと美味いぞ! さすがはディアナさん。ワインを良く知るヴァンパイアだ!」

「セラぁ! 褒めても何もでないぞぉ!」

 

 うふふ! あははと笑いながら、二人は注文用のタブレットを眺める。そして一際嬉しそうな顔で、


「シメに葡萄フロマージュパフェ行っちゃう?」

「ディアナさんが食べたいというのであれば、やぶさかではない!」

 

 二人はあれだけ飲み食いして、最後に別腹と言わんばかり季節のデザートで〆てガスト呑みを堪能し尽くした。

 

 お会計!


 ビール四杯。300円×2(ハッピーアワー) 400円×2(通常料金)

 ボトルワイン赤 1100円

 ドリンクバー 250円(クーポン)×2

 やみつきポテト たこ焼き味 450円

 若鳥の唐揚げ 五個×2 900円

 ミートドリア 600円

 マルゲリータピザ 800円

 牡蠣フライ 750円

 海老とフルーツのサラダ(L)800円

 チーズインハンバーグ人気盛り 1150円

 葡萄フロマージュパフェ 700円×2

 

 計、9850円。

 

 犬神さんの株主優待を思う存分堪能した二人は、颯爽と夜の帷と共に支払いを済ませて飲兵衛達だらけのマンションに戻っていく。

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