04_再生
浦野は、不思議な゙感覚に襲われていた。血が地面にたくさん流れたはずなのに、全然苦しくない。むしろ、元気がみなぎって来ている。ムカデ型の怨虫にやられた頭部も、何もなかったかのように、元通りだ。浦野は、頭部を失った自覚がないため、頭部が元に戻ったことに気づいてはいなかった。
「夢か。夢なのか。色々と、常軌を逸したことが起こり過ぎてて、パニックになりそうだ」
目の前の出来事は、夢と思いたい浦野は、頬に手をやり思いっきり引っ張ってみる。
「い、いたぉあああ!?ちゃんと夢だ!紛うことなき現実だ!」
「どうして、あなた生きてるの?頭部を破壊されたのに……」
ムカデ型の怨虫にとらえられた明日野が、信じられないという目つきで、浦野をまじまじと見ていた。
「し、知らないよ!こっちが教えてもらいぐらいだ」
事実、浦野は何も知らなかった。知らないことが多すぎて、頭の整理ができていない状態だ。
「うう~、確かに割れは頭部を食ったはずだ。再生したとでもいうのか」
ムカデ型の怨虫が、しきりに口を動かしながら浦野の方を睨みつけ言った。
こ、こいつ、話せたのかよ。そういえば、復讐しろっとか最初に言ってたかも。
そんなことはどうでもいい。僕の目の前で起こっていることは現実だ。どうする。逃げるか、逃げるしかないか。でも、女性がムカデ型の化け物に捕らえられているんだぞ。ほっとけるわけがない。逃げるのは彼女をなんとか助けてからだ。
「逃げなさい!私のことはいい、逃げなさい!私は、この怨虫からあなたを守るために来た。だから、私のせいであなたが命を失ってほしくない!」
明日野は、訴えかけるように浦野に向かって叫んだ。だが、浦野は彼女を見捨てる事はできなかった。小刻みに震える手を握りしめ、ムカデ型の怨虫の動きを見ている。
「駄目だ!君を置いてはいけない!大丈夫、何だか、不思議なんだけど、今の僕ならこの化け物に勝てるような気がするんだ」
浦野は、目を覚ましてから身体に力が湧き出て身体のあらゆる感覚が冴え渡っていた。
「な、何を言ってるの。一般人のあなたが、倒せる怨虫じゃないない。戦おうとしてはダメ。私のことはいい。あなただけでも逃げて!」
彼女が叫んだ直後、ムカデ型の怨虫が細長い胴体をうねらせてものすごい勢いで浦野の頭部に飛びかかる。
「お前が何故生きているか知らぬが、今度こそ終わらせてやる」
ムカデ型の怨虫は、殺意のこもった鋭い眼光を輝かせる。
何だ、遅い。
浦野は目を覚ます前は、怨虫の動きすら認識できないまま、頭部をえぐられてしまったが、今はむしろ遅く感じられた。動体視力が、以前と比較にならないくらい向上し、素早い動きを鮮明に把握することができるようになっていた。
浦野の身体的変化はそれだけではない。身体能力全般が向上しているため、相手の攻撃をとらえるだけでなく、軽い身のこなしで、攻撃を回避する。
自分の身体でないみたいだ。訳が分からないけど、今はそんなことを考えている暇はなさそうだ。彼女を助けて、逃げなくては。
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