12月20日 同時代の児童文学(第六部 農場での生活)
同時代の北米、中西部での生活を描いた物語には、大草原の小さな家シリーズがあります。私は、小学校高学年の頃にこのシリーズが大好きになって、この本の続編を読むため、図書館に通うようになりました。それまで一人でバスに乗る事もなかったのでドキドキしながら。今では良い思い出です。(^_^)
でも途中からは、残念ながらあまり夢中になれませんでした。まだ思春期の入口で読んだので、大人になった主人公の気持ちにあまり実感が沸かなかったという、要はタイミングの問題です。途中で中断して、大人になって続きを読めば違ったかもしれません。
シリーズの初めの頃は、読んでいる自分と同じ年頃の少女が主人公なので、別な自分の物語を読んでいるような気分になっていたんですよね。農作物の被害に耐えたり、ドアの外を熊や狼が彷徨っているかもしれないような生活ってどんなだろうとリアルに怖かったりしました。
その恐怖みたいなものも、このシリーズから遠ざかった理由の一つになったかもしれません。今でも好きだったと思えるのは、シリーズの一番目と三番目の、集落の近くで比較的安全に暮らしている作品です。
ところで、このお話はローラ・インガルス・ワイルダーという女性の実話を基にしたお話なのですが、一冊だけローラの夫であるアルマンゾの子ども時代を描いた「農場の少年」という作品があります。
ローラの実家より少し暮らしに余裕があり、その分、家族のエピソードもほのぼのしていたような記憶があります。が、学校での体罰に関わる描写があり、今では子どもが読むには繊細な配慮の必要な作品です。
このアルマンゾは、スターリング少年のお父さんより五才年上なので、ラスカルのお話のフレッド叔父さんと同じ年頃と思われます。
農場の少年であるアルマンゾは、将来も農場で働き続ける事を前提に少年時代を過ごしています。
この中で、長女であるイライザという姉が、都会の学校へ(あるいは働きに?)行っていた”威張り屋”という事で、お姉さんなのになぜかヒール役で登場します。(^_^;) 子どもの頃から、これは作者のローラがあまりこの義理のお姉さんを好きじゃなかったからだと推測していました。
大人になり、実はこのイライザという義姉がローラの一人娘がハイスクールに行けるように自分の家に下宿させ、学費を払っていたという事にショックを受けました。
「じゃ、恩人なんじゃないん?」
普通、こういう恩人に対しては、たとえ後で作家になってその時のお金を支払ったとしても感謝するものだと思います。でもローラは、娘の進学は必要ないという主義だったので、この義姉や娘の裏切りとも言える行為に苛々していたのかもしれません。
「ラスカル」を読んで、この「農場の少年」の事を思い出しました。この本に出てきたイライザは、「ラスカル」に出て来るスターリングのお姉さん達のタイプだという気がするんですよね。都会の進歩的な考え方に慣れると、田舎の遅れているところにどうしても目が行ってしまうんてすね。そこで暮らしている人達は一生懸命なのに。
フレッド叔父さんの息子達の事については、農家の仕事に学歴は必要ないというのは、昔は割と普通の考え方だったかもしれませんね。
でも家族でも他人でも、相手に自分の意志で色々な生き方を選択させるという、その事がきっと大切なんだろうなぁと思います。それは時にすごく難しい事でもありますが。
相手に愛情があるからこそ、自分の願い通りにしてほしいと思うので。
相手に選択させる……その事は、ラストのシーンで、主人公スターリングがラスカルに呼びかける言葉へと繋がっていくのです。
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