12月16日 金網の向こうのクリスマスツリー(第五部 物語と様々な行事)
この物語に出て来るもう一つの大きな行事は、やはりクリスマスですね。
ノース家のクリスマスはその年、寂しいものだったと書かれています。戻って来るのが次女のジェシカだけだったからです。
とは言え、ジェシカの登場は、ページからその眩しい感じが伝わってきます。
もしジェシカが帰らなければ、長女のセオと夫は来られないので、父と子とラスカルだけで過ごすクリスマスになるところでした。母は亡くなっているし、兄のハーシェルは戦場なので。
クリスマスの夜、ノース家では、いつも動物達をお客様として招待する事になっています。素敵な企画ですね。
ただしピカピカ光る物に目のないラスカルは、きっとクリスマスツリーに反応する事、間違い無しです。
これに対し、スターリングは、ジェシカが帰って来る前に独りで準備を整えておきます。
どんな準備かと言うと、あらかじめクリスマスツリーの周囲に金網で柵を張り巡らせておくのです。それやこれやで家の中には、壁の綺麗なところにまで釘を刺したりもします。(^_^;)
お父さんはこれを見ても叱らず、「ジェシカが見たら何て言うだろうな……」と。
相変わらず呑気な父です。実家に戻り、この状態を見たジェシカは案の定、眼を丸くするものの、弟のこの家での奮闘ぶりを認めないわけにはいきません。十二才ながら、この家の掃除や料理を頑張ってやっているんですから。
でも家の中に作りかけのカヌーがあるのには、さすがに驚き、どうする気なのと注意します。
読んでいて、作りかけのカヌーを置けるスペースのある家があるという、そっちの方にまず驚くんですが。納屋でなく、室内です。
カヌーは資金不足のため、途中で頓挫していたのでした。当時、スターリングの周りには、お小遣いをもらっている子はいませんでした。もちろんスターリングも。
では必要な物をどうやって買っているかと言うと、バイトのような事をしていました。近所に芝刈りの必要な家があれば賃金をもらってやるし、スターリングは新聞を配るバイトもしていました。アニメではこうして配達した家の一軒の老人と知り合いになる回がありましたね。好きなオリジナルエピソードの一つです。
その他にも、スターリングは戦時農園で採れた野菜を売ったり、野生のジャコウネズミを捕まえて売ったりしていました。ジャコウネズミの毛は毛皮になるので、売れるのです。ただこのジャコウネズミの捕獲に関しては、アライグマの毛皮も取り引きされる事に心を痛めてからは、二度とするまいと決心し、生涯、守ったそうです。
カヌーの材料は、こうして貯めたお金で少しずつ買い揃えていったのですが、地域の人達からの苦情でラスカルに首輪、リードを付け、檻も作らなくてはならなくなったため、あと少しという所でお金がなくなったのです。あと必要なのは、帆布だけでした。
クリスマスイブのメインイベントは、プレゼントをみんなの前で開けていく事。これは他の映画でも見た事があります。「もう一つの感染症」で書いたセオ夫婦からのアイススケート靴。そして、とにかくこのままではいけないと感じたジェシカからは、残りのカヌーの材料、帆布がプレゼントされました。
お父さんからは、スペリオル湖で採った瑪瑙でした。専門業者に磨いてもらい、美しくなった瑪瑙を革の袋に入れて、姉と弟に三個ずつ、ラスカルに一個プレゼントしてくれたのです。
喜ぶラスカルとそれを見守る家族。ジェシカは、もちろん一目でラスカルが気に入り、すぐに仲良くなりました。
アライグマは基本、冬眠をしないのですが、やはり冬は眠りがちで、この夜もすぐに自分のねぐらにに帰るのです。
そうしてこういう動物が春になった時、一気に大人に成長しているものなんですよね。
このお話は実話だけに、こういう幸せな場面と切ない場面、「動」と「静」という真逆な場面が折り混ざっているんですよね。現実ってそうですよね。
クリスマスのエピソードは、そんな、次に来る悲しみの季節をも予感させるエピソードでした。
ちなみにアニメでもあった、網に囲まれたクリスマスツリー。これはウィスコンシン州にあるスターリング・ノース記念館にも網に入った状態で展示されてあるそうです。
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