12月10日   瑪瑙/アゲート(第三部 圧倒する自然)

 八月、父と子はその夏、二度目の旅へ出ます。行く先は、スペリオル湖。今度は、ラスカルの荒らしたトウモロコシ畑について近所から苦情が起こったのがきっかけでした。話し合いの結果、ラスカルに首輪とリードを付け、檻に入れなくてはならなくなり、意気消沈するスターリング。「ラスカルを連れてどこかの山奥の山小屋ででも暮らしたい」とこぼします。するとお父さんは、「それならどこか山奥へ行こう!」と提案します。スターリングを励ますために旅に出る事を思い付いたんですね。実は仕事に関する用事も旅先で片付けようという計画もあるにはあったんですが。


 そしてこの旅は二週間も続き、その間の犬と戦時農園の世話は、コンウェイさんの子ども達にお願いする事になりました。

 二人プラス一匹は、北部のウィスコンシン州に向かいましたが、そこは針葉樹の種類が違うので、森の匂いまでもが違うのでした。

 スターリングは、自分達がキャンプをしている崖の花崗岩が二十憶年以上も昔に出来たものだとさらりと書いていて、読者は驚かされます。


 スターリング達はスペリオル湖である宝物を見つけます。それは瑪瑙メノウです。湖の岸に瑪瑙メノウは幾つも転がっていました。見た目では分からないのですが、石が割れていると、その断面で瑪瑙メノウと分かるのです。

 ピカピカ光る物に目のないラスカルも、湖の岸に光っている石を見つけ、岸まで持って来ます。



 瑪瑙メノウ、あるいはアゲートは、石英などの結晶が集まって出来た鉱物の一種。結晶が重なり合う事により、微小な無数の穴が開いています。その隙間に様々な鉱物が入り込む事により、天然の美しい色合いと模様が出来、この世に二つと同じ物は無いのです。このエピソードでは、無数の穴の開いた鉱物にスペリオル湖の水に含まれた別な鉱物の成分が染み込んでいるのです。気の遠くなるような長い年月をかけて自然が作り出す宝物です。

 瑪瑙メノウという日本での呼び名は、仏教から来ている呼び方で、仏教では七宝の一つとされています。瑪瑙とは馬の脳の事で、この石の断面図が馬の脳に似ている事に由来しているそうです。スライスされた瑪瑙メノウは、色付けされ、コースター等、インテリアグッズとしても売られています。

 近況報告に青で着色された瑪瑙のコースターの画像を載せています。ずっと前に山口県の秋芳洞のお土産屋さんで購入した物です。ただし、山口県で採れた物かどうかはアヤシイです、瑪瑙は日本でも採れますが、主に青森県や石川県、島根県が有名な産地みたいなので。でも秋芳洞は、鉱物の宝庫のような場所なので、実際にそこで採れた物かもしれませんが。(^_^;)


 アゲートというのは、瑪瑙メノウの英語名agateです。こちらの呼び名は産地であるイタリア、シチリア地方のアガーテ川が由来らしいです。



 スターリングのお父さんは、これらの瑪瑙メノウについて拾った時から、ある考えがありました。それは、見つけた瑪瑙メノウを專門の店に頼んで磨いてもらう事。飴色で縞模様の瑪瑙メノウは多いのですが、これはまるでアライグマの尻尾の縞模様を思い起こさせるので、ちょうど良いプレゼントになると考えたのかもしれません。そして楽しみは、クリスマスイブまで持ち越されます。


 近況報告に、コースターの横に写っているのが飴色で縞模様の瑪瑙メノウで、ラスカルの、このエピソードに触発され、去年、地元のアクセサリーのお店で購入したものです。あまり写真を写すのが上手くなくてスミマセン。(^_^;)

瑪瑙は、アクセサリーに加工されると高級品になるかもしれませんが、石自体は、世界各地で採れるため、決して高くはありません。


 撮影しながら、コースターを購入した秋芳洞の事を思い出していました。

 地元では、子どもの頃から町内会の催しや学校の遠足でよく訪れる、定番の場所です。子どもの頃には、長い年月をかけて出来た石の変化に、生まれるずっと前から世の中が続いていたんだ、みたいな不思議な感覚を味わっていました。だからこそ、スターリングがこの旅で風景を見て感じた気持ちを想像し、共感出来るんですよ。

 もちろん、怖い物知らずで森の中でハンモックで寝たりできる十二才の少年の感覚とは違うのですが。

 













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