12月9日 鳥を見に行く(第三部 圧倒する自然)
スターリング少年が父親と車で遠出をするエピソードは、原作の中では二度出てきます。どちらもアメリカの雄大な自然がいきいきと描かれ、お父さんやラスカルと旅をするスターリングのわくわく感が伝わってきます。
一度は、流行歌(「ラスカルと音楽」の回に出てきた「長い長いくねった道」)の歌詞に出てくるナイチンゲールという鳥について、お父さんに尋ねたのがきっかけでした。
私は知らなかったのですが、ナイチンゲールというのは、和名をサヨナキドリという、夜に鳴く鳥なんですね。
夜に鳴く鳥がいるという事すら、これを読むまで知りませんでした。何となく、朝、小鳥の
とにかくお父さんは、スターリングに、じゃあ仕事を休むから鳥を見に行こうと、さっそく用意をします。いつも行動派と言うか、突飛というか、自由奔放でフットワークの軽いお父さんです。季節は七月で、子どもは夏休み真っ盛りです。
この用意というのが素敵です。チーズサンドイッチとルートビアとソーダを持って、お父さんの自慢の車で出かけるのです。七人乗りのオールズモビルです。もうその場に自分もいたいなぁと思うくらいです。
父と子、そしてアライグマのラスカルは、湖で思う存分楽しい一日を過ごすのです。
でも結局、目当ての鳥は、夕暮れ後でないと鳴かない夜行性なので、そこからじっと待つ事になるのですが。(^_^;)
目当ての鳥は、ナイチンゲールでなく、ホイッパーウィルという、その土地の夜行性の鳥。
林の中、月の光を浴びながら待っていると、突然その鳴き声が聞こえてきます。その名前の由来である「ホイッパーウィル」という鳴き声が。その声に耳を澄ませていた時間はどのくらいだったのか……。その音楽は突然止みます。
この本の挿し絵はまるで版画のように黒い部分の多い、緻密な絵で、それでいて可愛く、魅力的です。そして特にこの場面の挿絵、父と子とアライグマが鳥を見上げているシーンの挿絵が個人的に大好きで、心を離れません。アニメ版の絵も好きなのですが、全く違う魅力です。アニメ版が昼なら、こちらは夜の魅力でしょうか。場面の切り取り方がすごいです。また、アライグマの毛の一本一本がていねいに描かれている感じ。
これは、ジョン・ショーエンヘールというイラストレーターさんの挿絵です。児童文学、特に動物ものの挿絵、またSF小説の挿絵を主に描いていた有名な方みたいです。動物ものとSFというのはジャンルが離れていそうですが、このショーエンヘールがSF雑誌に描いた絵が後に、スター・ウォーズのチューバッカというキャラクターに生まれ変わったとか。チューバッカは動物のような長い毛に覆われた宇宙人のキャラです。
ラスカルと言い、長く愛されるキャラクターに縁のある画家さんなんですね。
この旅のエピソードは、アニメでは、友達も一緒なんですが、ここは父と息子とラスカルという原作の方が好きでした。と言うか、こちらが実話なんですが。
ちなみに作品が発表されたのが父親(99才と長生きされたようです)の死後三年目との事。実際に書かれたのはその少し前でしょうか。
スターリングはきっと、ラスカルの思い出とお父さんの思い出を何処かに一緒に残したかったのですね。
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