第18話

「あんなに踊れるなんてさすがだな」

モニターを見ていた宏は本当に関心したようにため息交じりの声を出した。

「ファンになりますか?」


友美の質問にも素直にうなづく。

友美は少しだけアイドルの香澄に嫉妬心を抱きながらも、宏からの次の命令を待った。

「さて、次はどうしようか」


宏はそう言って友美へ視線を向けた。

友美はスーツの上着を肩にかけているだけで、ほぼ全裸の状態だった。

ここから更にエスカレートさせなければならないということは、もう最終目的はひとつしかない気がする。


犯人は自分たちに性交渉をさせたいのだということも見えてきた。

でも、なぜ?

そればかりはわからない。


もしかしたら犯人だけでなく、日本中、世界中の人たちに自分たちの姿が配信されているのかもしれない。


無理矢理性交渉をさせるということは、そこにお金が発生している可能性は十分にあった。

犯人の趣味の悪さに思わず舌打ちをした。

「宏、大丈夫ですか?」


「あぁ、平気だ」

宏はすぐに笑顔を作った。

社長である自分が不安そうな顔をしていたら、部下たちもみんな不安になることを宏は知っていた。


だからどれだけ嫌な予感が胸にあっても、それを表に出すことはない。

「私はなにを言われても、それを見られていても平気ですから」

守ってやらないといけない部下にそんな風に気を使われてしまった。


「ありがとう。でも、もうこれ以上君に触れることはできない」

その言葉に友美の表情は一瞬曇った。

さっき宏と密着したことで友美の体はまだ火照っていて、下腹部はいやらしく湿ったままだ。

正直、次に自分たちの番がくるのが待ちどおしくさえあった。


それが途端にお預けをくらった気分だ。

「……どうしてですか?」

「これ以上君の妖艶な姿をみんなに見せることはできない」

その言葉に友美は一瞬目を大きく見開いた。


心臓がトクトクと早鐘を打ち始める。


宏の今のセリフはまるで嫉妬しているようにも聞こえた。

「じゃあ、私はなにをすれば?」

その質問に宏はうなづく。

「あのアイドルの子はダンスするだけでよかった。だから君は、そうだな……」


もし同じようにダンスをしろといわれても友美に自信はなかった。

ある程度の教養は持っていると思うが、ダンスなどとは無縁な生き方をしてきた。

せいぜい映画で見たことがある程度だ。

焦っていると、宏が「そうだな、全裸で四つんばいになって、部屋を歩いてもらおうか」と、言い出した。


「四つんばいに?」

友美は驚いて聞き返す。

「あぁ。ちょっと恥ずかしいかもしれないけど、できるか?」

友美はおずおずとうなづいた。


全裸で四つんばいで歩くなんて恥ずかしいに決まっている。

だけど今までのことを考えたらできなくはなかった。

なにより、命令に従わないと私たちは死ぬのだ。


その事実が友美を突き動かした。

肩にかけていた上着を脱ぎ、そのまま四つんばいになる。

後ろから見るとお尻が突き出た状態になってすごく恥ずかしい。


友美はできるだけ顔をあげないようにして、部屋の中を歩き始めた。

歩くたびに形のいいヒップが左右に揺れて、くびれたウエストがひねられる。


胸元は揺れて、それでいて野生的な動きをしているため思っていた以上の艶美さがかもし出される。

宏はごくりと唾を飲み込んで友美の様子を見守った。

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