第17話

前の2人があまりにも過激なことをしはじめたので、モニターを見ていることもできなかったようだ。

「どうする? お前、どこまで行ける?」


聞くと、香澄は一瞬ビクリと体をふるわせた。

まさかそんな質問をされるとは思っていなかったみたいだ。

香澄ももう19歳だ。


であった頃の幼さはなりを潜め、目の前にいるのは立派な大人の女性だった。

だから、あの二組と同じようなことができなくはないと思う。

でも、アイドルに対してそんなことをしてしまってもいいのかどうか、京一は決めかねていた。


もちろん、なにかしら行動いないとここで2人とも死んでしまうということだって理解している。

理解した上で、まだ悩んでいるのだ。


「わ、私は……もう、子供じゃないです」

香澄は下をむいてとても小さな声で答えた。

京一は目を見開いて香澄を見つめる。


「さっきみたいなことができるのか?」

モニターを見ていなくても、あえぎ声を聞いているからなにがあったのかわかっているはずだ。

その上で香澄はうなづいた。

「俺が相手でも?」


その質問に香澄は顔をあげた。

その目には涙が滲んでいて今にも零れ落ちてしまいそうだ。

でもこれは演技なんかじゃない。

本物の涙が浮かんできているのだと京一は感じた。


思わずゴクリと生唾を飲み込んでしまう。

目の前にこれだけ可愛い女の子がいて、性的なことをしても大丈夫だといってきている。

これで反応しない男なんていないだろう。


京一は勢いにまかせて香澄の体を抱きしめていた。

強く強く、だけど壊してしまわないように最上級の優しさを持って。

「どうするの?」

香澄が腕の中で身じろぎをして聞いてきた。


「あぁ、そうだな……」

そっと身を離して香澄を見つめる。

香澄はうるんだ瞳で小首をかしげ、京一を見上げていた。

これだけ可愛いんだ、きっとまだまだファンは増えてメジャーデビューもできるに決まっている。


京一はふっと笑顔を見せて香澄から身を離した。

そして「全裸になって、新曲の振り付けを踊ってみて。今度は失敗するなよ」


大きな胸が京一の前でおしげもなくゆれる。

腰のくびれが強調されたり、形のいいヒップが目の前に突き出される。

汗が体を流れていくたびに妖艶な光を放ち、京一の脳内をクラクラさせた。


香澄の頭の中では新曲が流れていて、それにあわせて体は自然と動いていた。

さっきうろ覚えで起こられた箇所も、今度は難なく踊りきることができて思わず笑みがこぼれる。

目の前にいる京一は相変わらず険しい表情で香澄の振り付けを見ているが、その視線からは強い愛情を感じることができた。


全裸でダンスなんて恥ずかしい――。

そう思っていた香澄だが、今は全裸で踊ることがこんなにも心地いい。

もっともっと私を見てほしい。

みんなに注目されたい。


そんな気持ちが強くなっていた。

そして振り付けはフィッシュを迎えた。

我ながら最高の出来だったと思う。

もう何度も練習してきたけれど、今までで一番よかったんじゃないだろうか。


荒い呼吸を繰り返していると京一が立ち上がって拍手をくれた。

「すごいぞ香澄、今回は完璧だった!」


そう言ってすぐに衣装を差し出してくれる。

香澄はそれを受け取ろうとしたが、途中で手を止めた。

他の2人は全裸のままで次の指示を待っている状態だ。


香澄自身も何度も服をぬぐのはめんどうだし、脱ぐたびに恥ずかしさを感じないといけなかった。

それならもう、このままでいい。


香澄が衣装を断ると京一はとまどったように視線を泳がせた。

香澄はそんな京一を見て可愛いと感じた。

自分より8歳も年上の京一を可愛いと感じるなんて失礼かもしれないけれど、本当にそう思ったのだから仕方がない。


とまどっている京一に近づいた香澄は背伸びをして、その唇に軽くキスをしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る