第16話
息を吸い込む暇もなく呼吸が乱れてきたとき、ようやく昌也は唇を離してくれた。
終わった。
そう思って安堵したのもつかの間、昌也は早紀の首筋に唇を押し当ててきたのだ。
くすぐったい感触に思わずビクリと震える。
「ちょっと、もう終わったでしょう?」
体中にかけめぐる感触をどうにか遠ざけようと早紀は言う。
昌也は早紀の首筋に顔をうずめたまま「ダメだよ、この程度で許されるとは思えない」と、答えた。
そんなことをいわれたら早紀に反論のしようはなかった。
昌也は音を立てて首筋を吸いながら、早紀の腰に手を回した。
その手がするりとスーツの上着の中へと入ってくる。
大きな手は見た目以上に繊細な手つきで早紀の体をまさぐりはじめる。
「んっ……」
昌也の手が胸に触れた瞬間、思わず声が漏れていた。
恥ずかしくて目をあわせられない。
「大丈夫だよ中野さん。とっても可愛いから」
そうささやきかけてくる昌也の吐息はとても甘く、そして乱れていた。
昌也が冷静さを失いかけていることはすぐにわかった。
さっきまで優しかった手つきが急に荒々しくなり、乱暴に早紀の胸をもみしだく。
「あぁっ! ダメ!」
しばらく彼氏がいない早紀は久しぶりの感覚に声を抑えることができない。
その声に反応して、昌也は早紀のブラウスをたくしあげていく。
もう服の上からじゃ満足できなかった。
直接その柔らかな部分に触れたい。
自分の手で包み込んで、刺激を与えたい。
そんな感情に突き動かされるがままに昌也はブラウスの中に手を入れた。
「も、もう十分だと思うわよ」
服の上から昌也の手を制していう。
昌也はおもちゃを取り上げられた子供のように不服そうな視線を早紀へ向ける。
「まだアナウンスはなにも言わない。だから続けるべきだ」
「そんな……」
昌也の手は容赦なく早紀のブラに到達した。
その上からゆっくりともみしだいていく。
早紀と昌也の吐息は徐々に荒くなっていき、下腹部がもう隠せないほどの湿り気を帯びてくる。
2人はそのまま横倒しになり、昌也は早紀の服をたくし上げた。
咄嗟に体を隠そうとする早紀に覆いかぶさる昌也。
少し乱暴にブラを押し上げ、その先端を口に含んだ。
「ああぁ!」
突然体中に駆け巡った快楽に早紀は腰を跳ね上げて反応する。
昌也は口に含んだ胸の先端部分を、舌先で転がし始めた。
ねっとりとした唾液が絡みつき、ぬらぬらと輝いている。
「とてもキレイだ」
昌也はささやき、早紀にキスを落とす。
もう、モニター越しに誰が見ていようが関係なかった。
2人の世界に深く深く入り込んでしまとうとした、との時だった。
「いいでしょう」
雰囲気をぶち壊すようなアナウンスの声が聞こえてきて昌也は動きを止めた。
気にならなくなりはじめていた恥ずかしさが途端に早紀を襲い、あわてて服を元に戻す。
昌也は早紀の上から身をどけるとチッとあからさまに不機嫌そうな舌打ちをした。
その下腹部はもう我慢できないくらいにそそり立っている。
それでもアナウンスがいいというのだから、続きをすることはできなかった。
自分の早紀との関係はこの空間があってこそ成り立っているものだという認識が強かったからだ。
そして無常にも、ターンはマネージャーとアイドルのペアへとうつってしまったのだった。
☆☆☆
マネージャーの京一がアイドル志望の香澄と出会ったのは香澄が15歳、京一が23歳のときだった。
泣いている香澄を見て、「泣き虫アイドル」としてデビューさせたいと思った。
それから4年の月日が流れ、そこそこの人気が出てきた香澄だけれど、まだメジャーデビューできるほどではなかった。
CDも手売りだし、イベントのほとんどが地元の祭りなどだった。
それでも香澄は文句など一切言わずに頑張ってきた。
そんな香澄は今、とても不安そうな表情で京一を見つめていた。
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