第14話

友美にとって宏をもっとも印象付けた出来事だった。

ただのいち部下の友美に対しての優しい態度。

その時から友美はぜひ宏の近くで仕事をしたいと願うようになり、靴も大切に扱うようになった。


そして念願かなって、社長秘書の座についたのだ。

パンプスのよごれをぬぐった友美は更に服を脱ぎ進めていく。

目の前で宏が見ている恥ずかしさをどうにか押さえ込んで、ようやくの思いで全裸になった。


恥ずかしくて胸元は腕で隠している。

宏が口をポカンと開けた状態で友美を見つめていた。

それは想像していた以上にキレイな体だった。


傷ひとつなく、電気の光で輝いている肌。

もっとよく見たくて近づいてくと友美は自分の身を守るように少し後退した。

宏はその場に立ち止まり自分の上着を脱いで友美の方にかけていた。


こんなことをしたら許されないとわかっていても、そうしたかった。

このキレイな体をモニター越しに見られていると思うととても我慢ができない。

「社長!」

友美が思わず言う。


「宏、だ」

「ひ、宏、そんなことしたら……」

「大丈夫。俺にまかせて、体の力を抜いて」

友美は言われたとおりに体の力を抜いた。


途端に胸元に宏の手が伸びてきて再び体に緊張が走る。

抗議しようと身をよじるが、左手でしっかりと抱きしめられて離れることもできない。

宏の指先が敏感な突起にふれた瞬間思わず「あっ」と声を漏らして身をのけぞらせていた。


こんなところでこんな声を出すなんて!

恥ずかしくなって顔が真っ赤に染まっていく。

しかし宏は攻め続けた。

乳房をゆっくりともみしだき、指先で転がすように突起をつまむ。

宏の指の動きに合わせて友美は小さな喘ぎ声を出し続けた。


友美の下腹部がジワリとしめり気を帯びてきたとき、宏の体が友美からスッと離れていった。

つい「もっと」と、口に出してしまいそうになる。


こんなところでやめるんなんて卑怯だ。

体の奥にくすぶりだした熱はすでに友美の体中を這い、制御できなくなっている。

「考えましたね」

アナウンスが含み笑いの声をもらす。


アイドルペアよりも過激なことをしたという認識を持たせつつ、それを見せないようにしたのは宏の勝ちだったようだ。

「でも、次はきっとそうはいきませんよ」

アナウンスの声は意地悪くそう言ったのだった。


「どうしよう。また私たちの番だわ」

編集者の早紀は困り果てて座り込んでいた。

モニター越しにでも激しい内容を見せられて、体が少し火照っているのを感じる。


こんなこと、作家である昌也に悟られるわけにはいかなかった。

「他のペアみたいな命令をすればいい」

「本気で言っているの?」


「もちろん。じゃないと俺たちは死ぬんだから」

昌也は相変わらず冷たい表情をしている。

だけど命令を出せと言うことは、生への執着はあるようだ。


「で、でも私は先生にそんな命令をすることはできません」

「なんでもいいから、とにかく言って」

なんでもいいと言われれば前から見て見たいと思っていたものが脳裏を過ぎる。

だけどあんなものじゃOKが出ないことがわかりきっていたのではやり早紀は黙り込んでしまった。


「あまり待たせないでください。死にますよ?」

やはりというか、待っていたかのようにアナウンスの声が聞こえてきた。

「わ、わかったわ。なんでもいいならとにかく命令してみるけど……笑顔を見せてほしい」


最後のほうは聞き取れないくらい小さな声になってしまった。

人見知りで作家のパーティーにもあまり参加しない昌也はいつでも冷めた顔をしている。

そんな昌也の本当の笑顔を見て見たいと早紀はずっと思っていたのだ。

だけどこんなことでOkがでるわけがないと、すでにわかっていた。

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