第12話

そう、香澄は本当はちょっとやそっとのことでは泣かない。

涙を自在に出したり引っ込めたりできるのだ。

わざとこかされたりすれば激怒するのが香澄の本来の性格だった。


でも京一のおかげで難を逃れることができたわけだ。

「あの時、本当に嬉しかったんだよ」

香澄はそう言いながら京一に近づいてくる。


「その時から思ってた。あなたが恋人だったらいいのになって」

香澄はそのまま京一に身を擦り寄らせた。

フリルたっぷりの衣装越しに香澄の肉体を感じる。


それは出会ったときの幼い香澄ではなく、立派に成長した大人の香澄の体だった。

その途端京一の下腹部がうずいた。

京一だってまだまだ枯れてはいない、男盛りだ。


いくら仕事相手だといってもこうして密着されれば意識してしまう。

しかも香澄本人がいいと言っているのだ。

迷う必要はもうなかった。


「身体測定だ」

京一がささやく。

香澄は一瞬不安そうな表情を浮かべたけれど、素直にうなづいた。


一旦京一から身を離すとスカートの中に手を入れてふわふわのパニエを脱ぎ捨てた。

フリルを失ったスカートは途端にしぼみ、枯れた花のように香澄の足に張り付いた。

香澄は次に上着に手をかけた。


様々な装飾品が縫い付けられている衣装のボタンを丁寧に外していく。

最後まで外し終えるとそれを脱ぎ捨てた。

白い下着に包まれた上半身があらわになり、息を飲む。

香澄のスリーサイズは当然把握していた。


太りすぎたらダイエットをさせないといけないし、痩せすぎても魅力を感じられなくなってしまうから。

でもそれは数値だけのものだった。

実際にこうして目にしたことはない。


香澄は頬を赤らめながらスカートも脱いだ。

均等の取れたきれいな体に白い下着の上下がつけられている。

思わずほぅっとため息が漏れた。


香澄は下着姿でモジモジと手遊びをはじめてしまった。

あまり見ているのもかわいそうになり、近づいていく。

「両手を下ろして」

京一の言葉に従う香澄。


ほど全裸の状態で京一に至近距離で見つめられている。

それだけで香澄の体は燃えてしまいそうなほど熱を持っていた。


京一は手を伸ばし、香澄の背中に両腕を回した。

そのままブラの線にそって手を這わせていく。

胸のふくらみにふれたとき、思わず唾を飲み込んでしまった。


次はウエスト。

京一が指示している通りの筋トレはかかしていないようで、キュッとくびれ、うっすらと腹筋がついている。

「腹筋の回数は減らしてもいいかもな。腹が割れたらちょっと、あれだから」


いいながら自分の声が震えていることに気がついていた。

とても緊張していて、香澄の体に触れる指先も小刻みに震える。

それでもどうにかヒップの測定も終わって滲んできた汗をぬぐった。

「服を着て」


香澄はうなづき、手早く衣装を身に着けていく。

「まぁ、いいでしょう」

なにか不満を残した言い方ではあるけれど、とにかく大丈夫だったようだ。

だけどまだこのゲームが続くのであれば……


チラリと香澄へ視線を向ける。

そしてすぐに視線を外した。

今は余計なことは考えないようにしよう。

とにかくここから脱出することだけを考えるんだ。

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