#22
孤児院に作りたい施設は、浴場、
トイレは手作業で作れる。大き目の穴を掘り、表面を粘土で防水加工した上で、二箇所に穴を開けた蓋ふたをする。穴の一つは排泄用の穴、もう一つは汲み取り用の穴である。
排泄用の穴を開けたところは、屋根と目隠しの壁で覆い、通気と脱臭の為天井と足元に通気口を開ければ良い。
炭焼き小屋も、むしろこの時代の技術レベルだと手作業で作った方が良いだろう。
が、浴場は(ボイラーも含めて)専門家に依頼して建築する必要がある。
しかし、手押しポンプの時のような裏技で代金を値引くことは、難しいだろう。
結論として、金策が必要になる。
という訳で、冒険者ギルドに行き、
害獣討伐は本来
イノシシは成獣で体長100
しかし、魔猪の剛毛は剣を弾き、その
◇◆◇ ◆◇◆
南の森の、薬草群生地の更に奥。
小川の
そこは、日本語で「
その沼田場の近くにイノシシの爪痕を見つけ、そこに罠を張る。
イノシシは基本、単独行動をする動物なので、森の中を
そしてそのポイントで待つのであれば、そこに罠を仕掛けた方が更に効率的に獲物を仕留めることが出来る。
使う罠は、「くくり罠」。簡単に言うと、小さな落とし穴を掘り、そこにイノシシが
匂い消しの為沼田場の下流で仕掛けを洗い、罠を仕掛ける。
あとは待つだけ。といっても、場合によっては数日かそれ以上かかる。
普通、飲まず食わず眠らずで数日待機することは不可能である。それを〔回復魔法〕を自分にかけ続けることで、無理やり実現した。
待つこと三日。むしろ「殆ど間をおかずに」といえる日数で、イノシシが現れ、そして罠にかかった。
◇◆◇ ◆◇◆
このイノシシを仕留めて持ち帰るだけでも、十分目的は果たせる。
しかし、俺はここにきて欲が出た。ついでだから以前から疑問に思っていたことを、確認してみよう、と。
イノシシと魔猪の違いは、体内に魔石を持つか否かである。
では、イノシシの体に魔石を埋め込んだら、そのイノシシは魔猪になるのか?
手元には、先日の廃坑の一件で手に入れた、
暴れるイノシシを、即席のブラックジャック(皮袋に小石や砂を詰めて作った打撃武器)で昏倒させ、首のあたりを切り開いて魔石を埋めた。
そして数刻後。イノシシは一回り大きくなり、その目は狂気に犯されていた。間違いなく魔獣化していた。
それが確認出来た以上、もう用はない。
☆★☆ ★☆★
野生の獣が、何らか(その多くは
そして魔獣になると、その体内に魔石が生成されるのだという。
しかし今回の実験で、明らかになったことがある。
魔獣になるから体内に魔石が生成されるのか、体内に魔石が存在するとその獣は魔獣になるのか。それはどちらも正しい、ということだろう。
けど、これで疑問の全てが解消した訳ではない。
例えば、既に魔石を持っている魔獣にもう一つ魔石を埋め込んだらどうなる?
魔石は
そして、人間に魔石を埋め込んだら?
ゴブリンのような、
なら人間が魔獣化したものが、「鬼」系の魔物ではないだろうか。
或いは、
とはいえイノシシに対して実験するのならともかく、人間に対してそのような(魔獣化の恐れのある)実験を施せるほど、俺は外道じゃない。
この疑問は、おそらく解消されないだろうし、解消されてはならないのだと思う。
★☆★ ☆★☆
◇◆◇ ◆◇◆
討伐証明部位である、左前爪をギルドに提出し、報酬(イノシシではなく魔猪の討伐報酬として計算された)を受け取ったあと、孤児院に帰って獲物を披露した。
「……おい。」
「何でしょう?」
「三日も四日も帰ってこないと思ったら、こんな大物仕留めに行っていたのか?」
「はい、そうです」
「いや、そうですじゃねぇだろう。つうか、外皮に殆ど傷がない。どうやって倒したんだ?」
「罠に
「罠……。もうお前、冒険者辞めて猟師になれよ。その方が絶対安泰だろう」
「いえ、やっぱり夢がありますから」
「そうか。
それはそうと、シンディの親父さんがお前を呼んでいるそうだ」
どうやらグラディウスに関し、何らかの進展があったようだ。
◇◆◇ ◆◇◆
「親父、いるか!」
「あらアレク君、こんにちは」
「だから貴様に親父といわれる謂れはないと何度言ったら……」
「じゃぁお
「まぁ」
「……殺す。」
いつものやり取りを和やか(?)に行いながら、【リックの武具店】に入った。
「お前の注文の小剣だが、ちょっと時間がかかりそうだ」
「それはどういう理由で?」
「この剣は、打ち付けるという動作と、包丁のように
従来の剣の製法じゃあ、“曳き斬る”という動作は想定されていないからな。
あっという間に刃が応力に耐えきれなくなる」
そういえば。古代ローマのグラディウスも、軟鉄(練鉄)と
なら、日本刀の製法でグラディウスを作ったらどうなるだろう?
「親父さん、鉄は、製鉄の過程で色んな性質の鉄が作られる筈だ。
なら、複数の性質の鉄を重ね合わせれば、親父さんの要求する――つまり俺の要求する――剣が出来るんじゃないか?」
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