#17
カラン村の一件で、明らかになったことがある。
それは俺の、決戦力の不足である。
アリシアさんが言った通り、
ある意味ではまだ12歳(満年齢で11歳になったばかり)のガキ
が、街の外に出て魔物狩りに繰り出すというのなら、「ガキ相応」というのは何の
とはいえ、対策は既に見えている。現在の体格でも魔物相手に十分な攻撃力を発揮する為には、
◇◆◇ ◆◇◆
「親父、いるか!」
「……
「ならおっさんが良いか?」
「帰れ。」
例によっていつものやり取りをした挙句、【リックの武具店】に足を踏み入れた。
「今日は、親父さんに武器を鍛えてほしいんだ」
「ほう、珍しい。お前さんが武器を
「笑えない冗談は置いておいて、一つは苦無。20本ばかり追加注文したい」
「わかった。既に型はあるからな。それはすぐに出来る」
「焦らないで良い。暫くは遠出しないからな。
二つ目。おやっさん、鉄串を作れるか?」
「誰がおやっさんだ。だが、鉄串? 屋台で使うような?」
「そうだ。だが長さは苦無と同じくらいで良い」
「お前は本気で俺を武具屋と思っていないだろう」
「数は多ければ多いほど良い。100でも1,000でも、作ってくれたら作ってくれただけ買い取ろう」
「……そんなに何に使う?」
「当然、投げて使うさ」
苦無は、質量がある分だけ威力がある。しかし、
けれど投擲武器ならば、回転させた方が当然威力(貫通力)は増す。
そこで考えたのが、鉄串の投擲である。当然それは、無属性魔法でブーストする。そう、無属性魔法Lv.1【物体操作】派生02b.〔
開発当初は出番がないと思っていた魔法だが、苦無より小質量で高効果を求める為、ここで登板させることになったのである。
鉄串なら安価で大量生産出来る。そして使い捨て前提で大量に所持しておけば、先の
「三つ目。
「小剣ならそこにいくらでもあるが?」
「長さは通常の小剣と同じ程度で良い。形状は
ここで俺がイメージしたのは、前世地球の古代ローマ帝国で使われていた「グラディウス」である。刺突に適すると同時に、斬断に威力を発揮する為の両刃の反りを持つ、凶悪兵装である。
そしてこれを活用する為に、新たな魔法を開発した。より正確には、カラン村での戦闘で使った魔法を、それ専用に再編したものだが。
無属性魔法Lv.1【物体操作】派生02 c.〔
グラディウスはその形状上、刺さったまま食い込んで抜けなくなるということは起こりにくい。しかし、それでも抜く為のひと手間を魔法に組み込むことで省略出来れば、連撃に向かない刺突を集団戦で使用することが出来るようになる。これも先のゴブリン戦の反省からである。
「……苦無はすぐに出来る。鉄串も、一本や二本なら時間はかからない。
だが、小剣は少し時間がかかるな。お前の
「あぁ。さっきも言ったけど暫く遠出する気はない。腰を据えて満足のいく剣を鍛えてほしい」
「わかった。クソ生意気なお前が文句のつけようもない剣を鍛えてやろう」
「期待している。
そして四つ目」
「……まだあるのか」
「あぁ。もう一本、小剣を鍛えてほしい」。
「あ? もう一本だ?」
そして、アリシアさんから借りっぱなしだった小剣を渡して言った。
「長さはこれと同じ程度。重心はもう少し手元に。だが重量はもう少し軽く。
柄の握りはもう少し細く。柄の先に紐を通す輪を付けて」
「……お前の剣にしては、少し軽くなるな。世間一般のガキが持つには丁度良いかもしれないが」
「女性の
「そういうことか。なら良い魔石がある。特別な効果はないが、それこそお守り代わりにはなるだろう。柄に埋め込んでおいてやる」
「……感謝する」
「やめろ。調子が狂う。ただ、女への贈り物なら、装飾を少し考えるか?」
「そうだな。なら鞘に邪魔にならない程度の装飾を施ほどこしてくれると助かる」
「良いだろう。ただこの剣は値引きしないぞ」
「女への贈り物を値引くなんて恥ずかしい。頼まれても御免だな。
あ、ついでと言っちゃなんだが、もう一本、料理包丁を打ってほしい」
「お前、その年で女二人も囲っているのか?」
「冗談言うな。二人とも姉貴分だよ」
「わかってるさ。孤児院の女傑二人だろ?」
「知ってるんならわざわざ言うな」
「あら、私にはないの?」
「おう、シンディ。どうした?」
「ううん、私のボーイフレンドが、ここで別の女への贈り物を選んでいる気がして、飛んできたの」
「……おいガキ、俺の娘に手を出したのか?」
「勘弁してくれよ。
「自分で『剥けてない』なんて言う12歳児をガキ扱い出来るか」
「ふ~ん、本当に剥けてないのか見てみたいな」
「いや御免なさい。勘弁してください」
「勘弁してほしかったら、私にも何か買って」
「え~っと、親父さん、木工用のナイフか何か……」
「お父さんに打ってもらうんじゃ意味がない! 今度アクセサリーか何か、
「わかりました。近いうちに日程を調整します」
「それで良し」
「で、俺の目の前でこのガキと
「あ、忘れるところだった。
アレク君、手押しポンプ、完成したよ」
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