#12
現世でも前世でも、「最弱の人型魔物」の名を
種としての上位である
その為、単独の場合や小集団を相手にする場合はそれほど脅威ではないにしても、集団戦となる場合の脅威度は、かなり高いものになる。
当時の俺は、その事実を(知識としては知っていたものの)正しく認識出来ているとは言えなかった。
★☆★ ☆★☆
一夜明けて。
俺とアリシアさんは、ゴブリンの集落のある森に足を踏み入れた。
ここのゴブリンの集落が「王」を
森を進んでいくと、前方にゴブリンが3匹いた。即座に〔
「待てアレク。深追いするな」
アリシアさんは警告したが、この程度の相手に
すると、逃走するゴブリンと入れ替わるように、新たなゴブリンが6匹。槍を持ち、横一列に並んで迎撃の態勢をとっていた。
俺の主力武装が投擲武器であることから、当然彼我の距離がなくなると不利になる。そして苦無も同時に2本までしか投げられない為、最初の一投は問答無用で、第二投でも相手の回避を掻い潜り、合計4匹を倒した。最後の2匹は相手の槍の穂先が届く距離まで近付くことになった為、一瞬の差ではあったものの、これも無傷で
この調子なら。
あたかもその気の緩みを待っていたかのように、斜め後方より矢が飛来した。
慌てて振り向くと、後方の樹上に弓を
そう。完全に包囲されていたのである。
「逃げるぞ」
アリシアさんは、俺の手を引きそう言った。しかし遅かった。
樹上からは文字通り雨の
こうなると取れる対処は強行突破しかない。ある程度の矢による被弾は仕方がないと
何匹かの弓兵は樹から
けれど、俺の力ではゴブリンの皮膚を切り裂くのが精一杯。急所に
最終的には剣を
結局、剣を捨てただ
◇◆◇ ◆◇◆
「何が言いたいか、わかっているか?」
何とかカラン村まで(「無事に」とはとても言えないが)逃げ切った後。アリシアさんは、これまで見たこともないような冷たい視線と口調で、そう言った。
「お前は昨日、あたしのことを
「勝てると、思ったんです。斃せる自信が、ありました」
「勝てると思ったかどうかを聞いたんじゃない。何故指示に従わなかったのかを聞いたんだ」
「……
「その結果がこれか。あたしたちは矢の雨と槍衾に囲まれ、お前は全部の武器を
ゴブリンどもの方がお前より戦術眼があるってのは、かなり皮肉だな」
「はい……」
「ゴブリンどもが何故引いたか、わかるか?」
改めて、落ち着いて考えれば簡単にわかる。相手が知的で
そもそも、昨日俺たちが村に着いた時から、俺たちはゴブリンたちに監視されていたのだろう。昨夜の襲撃はこちらの出方を
そして今日。俺たちの戦力を削ぐことが、奴らの戦略目標だったなら。
もしかしたら俺の主力武器が投擲武器であることから、それを消耗させることさえも目的の一つだったのかもしれない。
なら、今夜。おそらく本格的な攻勢をしてくるだろう。
そう告げたら、アリシアさんの表情は少し柔らかくなった。
「お前の強みは剣でもなければその
「はい。申し訳ありませんでした。今後は必ずリーダーの指示に従います」
「では今夜の襲撃に対し、どのような対処を採る?」
「今日の戦闘で、戦えるゴブリンは40匹以上いることが確認出来ました」
「40……。その数字はどこから?」
「俺たちが包囲されていた時。弓兵が左右におそらく8ずつ。正面の槍衾は6匹×3列。槍衾の後方に将軍と参謀がいるとして、その他に領主もいるでしょう。領主の側近を4匹と考えるのなら、単純計算で39匹。囮役を務めたゴブリンの生き残りが1匹いますので、合計40。最後に
「対して村の防衛戦力は、あたしら二人。しかも矢傷を負っている。【治療魔法】で
「いえ、ここは村を防衛する為の陣立てはするべきではないと思います」
「どういうことだ?」
「斥候の存在です。下手な作戦は筒抜けになるでしょう」
「ならどうする?」
「敵の想定の、裏をかきます」
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