#11
孤児院の改造は、いくつかの設備が完成するまではその先に進めることが出来ない。
その為基本的には手押しポンプ完成までは、計画の実現性の検討と指導者の選定などで時間が
そんな折、アリシアさんからちょっとした話を持ちかけられた。
「なぁ。あたしと
「え? パーティですか?」
「あぁそうだ。受けたい
その意味でアレクなら丁度良いんだ」
「どんな依頼を請けるつもりなんですか?」
「
「最低受注単位がパーティ、ということは、ゴブリン自体も一匹や二匹ということはないんでしょ?」
「そうだな。具体的な数は不明だ。だがその近くにあるゴブリンの集落の個体数は大体把握されているが、その
「……どうやって?」
「お前が確認したろ? あの廃坑にいたゴブリンは、ほぼ間違いなくあのあたりの集落から株分けされた連中だ。もしかしたらあの廃坑を新たな集落にしようとしていたのかもしれないな」
「そういう話なら了解しました。先日の依頼の続きという意味でも受けざるを得ませんね」
◇◆◇ ◆◇◆
そして翌日。冒険者ギルドに
「
「“取り敢えず”、ですか」
「はい。状況が良くわかりません。おそらく先日の廃坑に棲み着いたゴブリンと同じ集落に棲んでいたゴブリンと思われますが、何故集落を出ることになったのか。
変な言い方になりますが、東の森の集落のゴブリンとは、うまく棲み分けが出来ていたんです。にも関わらず、ここにきてカラン村に現れて作物を荒らすようになった。おそらく何かが起こっているんです。
ですから取り敢えずの依頼内容は、カラン村を荒らすゴブリンの撃退。
そのうえで出来るなら、その原因の調査。
冒険者の中には『自分が死ぬことで、その脅威度をギルドに知らせる』などと
「了解しました。この依頼、受けさせていただきます」
「ではパーティ名を確認させてください」
……あ。パーティ単位での受注なのだから、パーティ名がなければ受注出来ないのは当然だろう。
「アリシアさん。パーティ名はどうしましょう?」
「ふむ。何かアイディアはないか?」
「……っていうか、アリシアさんはないんですか?」
「ない」
「いや、そんなきっぱりと言い切らないでも」
「ないものはないんだから仕方がないだろう」
「……そもそもこのパーティのリーダーはアリシアさんなんだから、アリシアさんが決めてくださいよ」
「あたしにそんなセンスはない。アレクが決めろ」
……それで良いのか? けど良いというのなら、アイディアはある。
「では【
「ちるどれんおぶせらふ? 変な名前だな」
「古い言葉で【
実をいうと、子供たちの卒院年齢を引き上げ、冒険者ギルドに登録させるという案を出した時からこの名称のアイディアを
ただその時は、複数の
「……セラの子供たち、か。だがお前の場合、既に子供たちの父親役をしているように思えるがな?」
「というと、セラさんは俺の奥さん、ということに?」
「……10年早い」
「いやでも10年後じゃセラさんは30過ぎちゃいますよ?」
「ならお前が甲斐性を見せて、5年以内に
「良いんですか?」
「お前が今のまま成長していけば、5年後には誰も文句は言わないだろう」
「
「……プロポーズするのは5年後で構いませんが、依頼を請けるのは早めにしてほしいです」
あ。忘れてた。
「失礼しました。ではパーティ【Children of Seraph】で、ゴブリン退治の依頼を受注させていただきます」
「はい、受け付けました」
こうして【Children of Seraph】は、カラン村に向かうことになった。
◇◆◇ ◆◇◆
カラン村までは徒歩で丸一日。とはいっても、大荷物を持っていなければそんなに遠くではない。朝出れば、遅めの昼食を村で取れる程度の距離である。
カラン村に着き、すぐ村長の家に向かい、話を聞くことにした。
カラン村は以前から、近くに集落を持つゴブリンとの間で一種の協定を定めていたのだという。これは、相互の領域を定め、その領域を侵した側は相手によって何をされても文句は言えない、というものあった。にもかかわらず、ゴブリンは問答無用で村を襲撃するようになった。その規模も、少ない時で3匹程度、多い時は10匹以上なのだという。
村の防衛力(腕自慢のおじさんたち)では追い払うことが精一杯で、それも無理ならそれぞれの家に籠こもって通り過ぎるのを待つしかないのだという。
既に村を覆う
人的被害はまだ大きくはないが、今後被害が拡大することのないように手を打ちたい、ということらしい。
そして夜。
村長の家に泊めてもらう、というよりも迎撃の拠点にさせてもらい、ゴブリンの襲撃を待った。
時刻にしておおよそ午後8時過ぎ(ちなみにこの世界に時計はない)。
北側から、ゴブリン6匹が現れた。
物見役を買って出た村人から報告を受けた俺たちは、すぐに現場に向かった。
俺は、ゴブリンの最大数が10匹ほどと聞いた時から、それほど苦労する依頼ではないと考えていた。
というのは、
つまり、「一投一殺」を保証出来るのだ。
そして、苦無は消耗品だが現在手元に13本ある。また接近したら
実際、この夜俺もアリシアさんも全くの無傷で、ゴブリン6匹を撃退した。当然村にも被害はなかった。
この
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