新生せし炎の神
炎の神が目ざめた、とノノは言った。はたしてそれは本当のようで、人々の体から起こる炎も今は
彼がやったことは決して許されることじゃないけれど、とサンリアはこっそり考える。私は分かる、彼の気持ち。身内のはずのあの村で起こった足の引っぱりあい。全部燃えてしまえばこれほど気持ちのいいことはないだろう。あの世界の長のシステムは
「……乗っていいの?」
わん、と返事があった。サンリアはリリに倒れこむようにしがみついた。
全ての炎が集まっていくのを見て、インカー達もリリとサンリアも、中庭の祭壇に
「おお、インカーが炎の剣を取ったか。お前もあの炎を受けて無傷とは、すばらしい」
「だまれ
クリスが
「すまないな。
祭壇が音を立てて焼けおちる。
そこに座っていたのは、小さな赤い仔犬だった。
『ネーチャン。……ボクダヨ』
「お前、あの卵の……」
仔犬とインカーが目を合わす。仔犬は小さな尻尾を振るわせた。
『シノ。ボク、シノ』
「シノ……? それがお前の名前か?」
『ソー』
仔犬があくびをしながら伸びをする。ロジャーは
「炎の神……シノ……様?」
『ナニ?』
「あなたの加護を
『シナナイ』
「?」
「あー、多分知らないって言ったんだと思うよ?」
シノのたどたどしい話に夢の中で長いこと付きあっていたインカーがフォローする。
「は、は、は……。ご存じない。そうか……。私は、神のご意思とは本当に関係ないところで、本当に、私の手で……」
ロジャーは後ろによろめき、
『ネーチャン、イッショ? ソレ、ボク。イッショ、イク?』
「え? それって、これか?」
インカーが炎の剣を
『ソー。ソレ、ボク!』
「これは、ノノさんが変化して……」
『ノノは炎の神の端末。ゆえに炎の神の一部』
炎の剣からノノの声がする。
「な、なるほど……。じゃあ、一緒に行こう、シノ」
『ウレシ! ウレシ! モウ、ボク、ネンネ』
くうくうとはしゃいだかと思うと、なんの
「な、なんかさ……コトノ
レオンが
『まあ、コトノと違って卵の中でずーっと寝てただけじゃからのー。そんなもんじゃないかのー。
さて、ロジャーよ、どうする? ここで全部あとは炎の神に丸なげして
「……ああ。これは、困ったな……。想定外だ……」
ロジャーは
今回の一件は、全て炎の剣が
炎の神シノは、炎の神であるということを本人もまだ自覚しておらず、公表すると混乱を
そして、剣の仲間達は。
「……本当に連れていけるの?」
神都の門の外。一行はノノの仔犬達と共にいた。仔犬達をインカーの街に返しても、犬飼も母親ももういない。そこで、インカーと共についていくことになった。いや、もともとロジャーの計画では、インカーがそこにいようといなかろうと、玉犬達を剣の仲間につける
「ノノさんの子だし、炎の剣の
「やったー! リリ、これからもよろしくね!」
サンリアがリリに抱きつく。ミミはそれを横目にフィーネに
「ミミさん、よろしくお願いしますね」
「俺はどの子にしようかな……」
レオンが見回していると、わふ、と一番大きいロロがのしかかった。
「リオンはロロに気にいられたか! ロロお前重いから
「僕は……どっちにすれば……」
セルシアがククとテテに引っつかれて困惑している。
「あー……まあ、一頭今のところ余ってるし。交互にすれば? 銀色がクク、黒色がテテだよ」
「セルシアってば、玉犬にまでモテるのね……」
サンリアがちょっとだけ
「私はモモ、スッスはココだな。まあ、おおかた予想通りってとこか」
「ココちゃんはさぁ……可愛いんだけど、トロくない? 大丈夫?」
「そこはほら、スッスの反射神経でカバーしてくれ」
「ん〜〜〜! がんばる!」
クリスはヘソ天するココの腹を
「ところでインカー姉、炎の剣はどこに置いてきたんだ?」
「ああ、炎の剣は……今はコレだ」
インカーが
「ん? それ普通の髪かざりだったよな?」
「……お前にもらったのは、燃えちまったんだ。今はノノさんがこれに
「へえー! ノノさんはさすが、
クリスは髪かざりを指でちょんと突いた。
「あっつ!!?」
「バーカ、これでも炎の剣だぞ。ほかの奴が
「ノノさん……
「何の話してんのよ! ったく!!」
サンリアがグーパンを
「……ノノさんといえば、いつの間にしゃべれるようになってたの?」
「炎の剣になる時に、急にしゃべりだしたな。でも……分からない。普段は今でも全然しゃべらないし。本当はこいつらも、しゃべれたりしてな」
「えっ。ミミさん、お話ししませんか?」
フィーネが真剣な顔でミミに向きあう。ミミは鼻を鳴らしながら目を閉じ、フィーネの肩に頭を
「あっはい、ここを
フィーネがミミの首を撫でる。ミミはまた鼻を鳴らした。
「あははは! フィーちゃん上手い上手い。よく会話できてるよ」
「思っていたのと違うのですが〜……!」
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