愛のありか
リノモジュールは思考する。
地下にも
今なら自分の好きにできる、とリノモジュールは思考する。
この女を叩きおこしてめちゃくちゃにしてもいい。そうしたらどれだけ
リノモジュールは髪かざりに
リノモジュールは思案する。自分はどこまでクリスなのだろう? リノの記憶を持ち、リノの思考回路をまねているとはいえ、動かせるのはクリスの体だ。
「……ねぇ、インカー。君のこと
インカーの耳もとにささやく。インカーはうっすらと目を開けて、クリス?と彼の名を呼んだ。それを聞くと、胸が痛む。
「クリスじゃないかもしれない。分からないんだ。僕は……クリスじゃないはずなんだけど……。もしかしたら、君が僕を定義づけるのかもしれない。君が誰と共にいると思うかが、僕らにとっては重要なのかもね」
「……リノ、か。久しぶりだな」
「うん、こうして直接話すのはニヶ月ぶりくらいだね。僕の方は、クリスの中で君のことずっと見てたけど。君の弱点まで全部知ってるよ」
「キモいこと言うな。どうして出てきたんだ?」
「最初は君のこと
「……分からんよ、そんなこと。お前も私にとってはクリスに違いない。スッスじゃないかもしれないけど、クリスの大事な一部分だ。スッスの方は、お前のことも自分だと認めてたぞ。お前は、どうしたいんだ」
「僕は……いやだ。リノであり続けたい。クリスのことだけが特別に大事で、彼のために彼が死ぬまでそばに居ると心に
「じゃあ分かった、リノだよ、お前は。クリスの中に住む別人だ。その上で、私はお前のことも好きになる。なった。おしまい」
「ちょ、えぇ……?」
リノは面食らった。寝ぼけてんのかこいつ、とも思った。
「要は記憶と人格の
「……結局、手っとりばやいのはそれか。分かったよ。僕のことはクリスじゃなくてリノって呼べよ。クリスほど優しくはしないけど、構わないよな?」
リノの目が
その後二人は昼下がりまで連れこみ宿に引きこもり、全身傷だらけになった彼女を見て、クリスはまた治してくれと
「スッスが反省したならそれでいい。だが傷なんか治せばいい、とは思ってないよな? お前が治さなきゃいけないのは、リノの心の方だぞ。野良犬は人に慣れるまで手ひどく
「あの子は、俺には、無理だよー! 多分、何言っても、逆効果になるんだよー! インカーごめん……気長に構ってあげて……」
「お前は、私がリノを好きだと言うのはいやじゃないのか?」
「え、うん。リノは俺のだから。むしろリノを嫌う奴は受けつけない」
「お前らマジでさぁ……ハァ、しかたねェな。これが
……分かった、そんなら私が一肌脱ごう。リノを出せ。
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