三全音…参…
外つ国の刺客
シミュレーションで見ていたとおり、闘技フィールドはぐるりと外壁に取りかこまれた、
唯一、かべが切れているように見える所が、雷様の玉座のようだった。初戦からずっと身じろぎもせず衣ひとつ揺らさず座しつづけるそのさまは、なるほどお世辞にも人間らしいとは言えなかった。
レオンは
敵にどう打ちこむか、シミュレーションはこの一週間いろいろと試しておいたが、相手はそもそも目が見えなくなった時点で
これじゃ練習にならないと気づいたので、途中から、危なくなったら視力を奪う戦法に切りかえた。追いこまれた時に剣の力を引きだせるかどうかも大切だったし、これはいい訓練になった。実際の試合を訓練気分でこなすのは、本気で参戦している相手に申しわけないなとは思ったが、まあセルシア並に耳を
「中々どうして、
レオンが第六試合を勝利して、
「まあな、視力を奪ってるのがバレて完全にヒールになっちゃったけど」
「観客なんてどうでもいいですよ。対策してこない人が悪いんです」
「セルシアと決勝まで当たらない組み合わせで本当によかったよ!」
「ま、実際決勝まで来たらね。お望みどおりボコボコにしてさしあげます」
そういうセルシアは、今のところ妨害などせずに真っ当な斬りあいで勝利しつづけていた。急所を的確に狙うため
「次勝ったらもう準決勝か。相手は……あー、多分クリスかな」
「クリス君、ヤバいですよ。めちゃくちゃ
「あれ、なんの仕掛けであんなに早く動けるんだ?」
二人は控室のモニタで他の試合の中継を眺めていた。
「僕には見当もつきません……リノちゃんと僕が準決勝で当たるんですよね。先にクリス君とレオン君の試合になるだろうから、種明かしは頼みました」
「うわー、いやだな……まあでもまずは、次の試合に勝ってからだな」
「そうですね、お互いがんばりましょう」
準々決勝、第一試合。
「雷様の権能を上回る驚異の術使いレオンよ。そなたの術はしかし、私には通用せぬ。心してかかるがよい!」
ワーグは試合開始早々、
「そうか、もう対策されたかー。無駄なことをお疲れさま」
レオンはわざと小声で反応した。視力を奪うやり方を続けていると、そのうち対策されるだろうことはさすがに予測できていた。
対策方法は二つ。他者の視力を借りるか、視力以外の方法で知覚するか、だ。
セルシアなどは後者のプロで、決定的に相性が悪い。ただ、前者ならば……
レオンは相手の反応を見た。レオンの小声は聞こえていないらしい。つまり、前者だ。観客の中に、彼の視覚を手助けする〈目〉が他にもあるのだろう。
それならば、勝てる。
レオンはグラードシャインに魔力を通し、〈それ〉をいつでも発動できるように構えておいた。
視野を奪う。相手は動じない。レオンが右に動くと、相手の
(なるほどね)
レオンは剣を構え、駆けだした。ワーグはしっかりと彼を
「なぬぅ!?」
彼の
ワーグの
「ガッ……!!?」
跳びあがったはずの少年は
彼の喉に、白くかがやく剣が突きささっている。
少年は、ゆっくりとその剣を抜いた。動脈も気道も切れていたのか、血と共に泡がボコボコと噴きでる。そしてすぐに傷口が閉じていくさまを、少年はまじまじと見つめていた。
勝者、レオン!のファンファーレと共に会場が湧きあがる。視野を奪うなんて
「ぐ、ゴボッ……ひー、い、今のは……魔法、か? ……」
喉が修復され、ワーグが仰向けのままレオンに問いかける。
「今のは俺の国の
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