三全音…弐…
武闘会に備えて
「ふう。よし、そろそろ王宮に着くよー。カッコ悪いとこ見られたけど、俺はそれでもこの国が好きなんだ。大切な人がその才能を
そして、この国がこう
クリスが口の
ゴンドラがゆっくりと駅に入り、ゲートが開いた。タラップに、白髪を短く刈りあげた初老風の男が立っていた。切れ長の目を強調するような目尻の
『よう来た、我が旧友の
口は開かない。じーちゃんと同じく念話のようだ。
「げ、雷様。待ちかまえてたのー?」
『まさか。今来たところだよ』
「ならよかったけど、現場が混乱するからあんまりうろうろしないでほしいなー。
『ナギラを助けるためさ。サンリアよ、出してやってくれ』
サンリアは言われて背負袋の口を開けた。じーちゃんが器用に羽と脚を使って外に飛びだした。
「お、昨日のフクロ……ん、フクロウじゃない、人なのか!」
クリスがおどろき、レオン達もおどろいた。AR越しに見るじーちゃんの顔にはタグが付いていた。
【公開情報 N=マルカトリラ=エズベレンド十五世 シロフクロウ(人格転写)】
『……雷公?』
じーちゃんが
『そうした方が過ごしやすかろう?』
「……じーちゃん、シロフクロウ(人格転写)って書かれてるわよ」
『まあ……まちがいではないか……。念話もどうやら既知の技術のようじゃし、乗っからせてもらうとしよう』
「リノが見たらきっとめちゃめちゃ
『ワシを研究しても生身のフクロウの構造以外何も出てこんぞい……あの者からは逃げることにするのでよろしく頼む』
『空を飛んでしまえばいい。いくらあの子とて、空を舞うことはできんよ。お
雷様がサンリアに
雷様がエントランスまで迎えにきたので、クリスとはその場で別れた。クリスも武闘会には出場するらしく、皆の活躍も楽しみにしてるよー!とニコニコ握手していった。
『さて、このゴンドラにまた乗ってほしい。私が運転していく』
雷様に
『君達には大会まであと二週間、客人として西の
「失礼ですがまず、武闘会の具体的な話をお聞かせねがえませんか? どのような形式で、どんな制約があって、何をもって勝敗が決定するのでしょうか」
セルシアがスッと挙手したあと、その手を静かに振りおろし胸に当て、少し
『ああ、それはもっともだ。ところで、私に対してそのように改まる必要はないぞ。君達は剣の仲間であり客人なのだ。ナギラに対する態度と同じでよい』
『もうナギラとは名乗っていないんじゃがな。エズベレンド十五世、エズベレンド公、マルカトリラ殿に直さんか?』
『ああ、こういう面倒くさいことも私は言わないからな。あのナギラが私の中でナギラ以上の価値であるものか』
『誰が面倒くさいじゃと!?』
「じーちゃんはだまってて」
サンリアにぴしゃりと叱られ、じーちゃんは荒々しく羽音を立てたが、それ以上は何も言わなかった。
『さて、武闘会の説明だったな。一対一のトーナメント戦で、
敗北宣言はいつ出してもよい。医療モジュールが無ければ死んでいたと認められる場合、敗北宣言ができない状態になったと認められる場合はその時点で敗退とする。武器を手ばなして十秒カウントされても敗退だ。
それから、フィールドは私のナノマシンにより相手に対する妨害の
ただし、このナノマシンを上回る〈奇跡〉を用意することが可能であれば、違反とはしない。つまり、君達の剣の
ああ、でも光の剣による視力破壊や音の剣による聴力破壊などの機能破壊は、正しく医療モジュールを設定してある相手には、永続しないと思っておいてくれ。それから、外野や審判にまで影響が出る妨害や知覚遮断を行った場合は違反退場となる。戦いぶりが分からないものは意味がないからな』
「参戦しない、という選択肢もあるのかしら?」
『もちろん、強制ではない。実戦により技量をあげる経験になるかと思って提案しているだけだからね』
「それじゃ、私は辞退しておくわ。魔法も無い中でウィングレアスは
『それは一理あるかもしれないな。後の二人は?』
「僕は出ますよ。まだオルファリコンで人を斬った経験が少ないんです。殺さないで済むならありがたい」
「セルシア……怖いこと言うなぁ! でも、俺も出るよ。確かに実戦経験は全然ないもんな。死なないならありがたい」
かくしてセルシアとレオンは、似ているようでまったく違う動機で武闘会に参戦することになった。
用意された宮殿は、
だがレオンが困ったのは食事だった。各々の居室にルームサービスが来る形で、何を隠そう彼は今まで食事を一人で食べる習慣が無かったのだ。最初は
「おはよーセルシア、朝飯はもう済んだか?」
「おはようレオン君。今からですが、どうしたんです?」
「一緒に食わね?」
「……いいですよ。サンリアちゃんも誘いますか?」
「う、うん……頼む」
サンリアと聞いて耳を赤くするレオンを見て、最初から二人で食べればいいのに、とセルシアは面白くなさそうに片眉をあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます