未来都市と不死身の神
「あー、レオン君もリノに
「ちっ違えよ! いやサンリア関係ないけど! どうやってしゃべってるのかなって気になっただけだ」
「ああ、僕はほら、
「喉、治せばいいのにねー。リノは
「治す必要性を感じないんだよね。脳スキャン即出力だと、音声出力よりもよほど高速にマルチタスクにこなせるから。この会話だって実際かかってる時間の半分くらいで脳の出力は終了してて、君達のヘッドセットの調整やお酒の味に意識を
「はー……ん、すげえなー……」
「レオンはご
「原理は分からないけれど、でもそれって、会話の途中で相手の反応や不測の事態で声を
「流れで
サンリアが
「まーたリノがモテてるよ。
「なんで男しか寄ってこないのかなぁ、このお店のせいかなぁ」
「おいおい、俺の店辞める気か?」
「冗談。
ニコリと笑うリノは
「さて、そろそろアルコールは効いてきたか? ナノマシンの用意ができたぞ。雷様によればこれがレオン用、サンリア用、セルシア用、だそうだ。お前ら
モルガンがカウンターの怪しげな機械から
「俺、やったことない」
「私もないわ」
「ふむ、じゃあ少し
レオンは言われた通りにしてみた。舌と喉の奥が少しチクチクし、少しして急に
「
言われて酒を口に
「酒がうすいと難しいんだよな。人それぞれだから気にせず、楽になったら再開してくれ」
レオンはうなずき、少し酔う
さきほどのような
「これが煙草かぁ。大変だったな」
「煙草はもう
『余計なことをするな、モルガン』
クリスの頬の模様が浮かびあがり、かがやく蝶がひらひらと舞いでた。モルガンとリノが眉をひそめる。
「……雷様かよ。こりゃずいぶん
『記憶を消されたいのか? 俺の
「そりゃあごもっともだ。まさか聞かれているとは思わなくてな」
『聞いていたわけではない、聞こえてしまうのだよ。今は聞きずてならないから反応しただけだ』
「そーでしたそーでした。で? なんのナノマシンだったんだ? 解析されたくないなら教えろ」
『翻訳デバイス無しで特定の言語を理解させるための
「……魔力ゥ?」
店内に微妙な沈黙が降りた。蝶がひらひらとカウンターにとまる。モルガンは
『モルガンは魔法を信じないのだな。まあそれはいい。ヒトの科学が追い付くまで、理解できないゆえに認識できないモノが増えるだけだ。理解できずとも信じれば、認識できる。私の神の力と同じだ』
「俺は神の力とやらも信じてねーぞ。半人半モジュールなだけだ、お前は。この街の甘く
『そういう面も多いにある』
神を否定されても、あっさりと雷様は受けいれた。
『だがそれだけではない。たとえば私は生身でも、そして国外でも、神の力をあやつることができる』
「そりゃあおめえ……ナノマシン持ちあるいてるんだろ」
『さてね。神を信じないならばそういう結論で永久にとどまり認識を
雷様が言葉を切る。モルガンは蝶から目をそらした。
『……今も円満に暮らしている』
「……そうかよ」
そう声を
店を出て、再びゴンドラに乗った。リノは外まで見送りに来た。
今や世界は情報に
レオン、サンリア、セルシアは、名前と旅人という身分だけが公開情報に表示されていた。
「なあクリス、リンスって誰だったんだ?」
「あー……雷様の今の奥さんだよ。そんで、モルガンの
「ふーん……よく分からないな、神様って
「モノには不自由しないと思うよー。でも……自分ばかりが
何人かの奥さんの話を見聞きしたけど……
皆最期には自殺したんだ」
「自殺、できるんですか? このシステムの中で」
セルシアが首をかしげる。喉の傷を治すなどという話が出るくらい医療モジュールとやらは
「ナノマシンを
だから実際死ぬにはものすごい決意が必要なんだなー……」
「リノさんの、あの傷はもしかして……」
「……まあ、
しばらく沈黙が続き、セルシアが背負っていたティルーンを胸に
カバーを外してゆっくりと歌いはじめる。
幸せな国とはなんだろう
事故や病気は無くなろう
それでも闇は残るだろう
雲の上でもまだ足りぬ
これより上は
求めるほどに逃げてゆく……
「セルシア。さん。んもー、やめよっか、それ。よくないよー。そういうの、よくないよ……」
クリスがめそめそと泣き出したので、セルシアは歌をやめてただ
この世界は天の
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