二人を誘う風…参…
ヨナリアと白い迷宮
そこは地下なのに、みょうに明るい空間だった。レオンはあたりを見回す。かべ、床、天井すべてが白い世界。そしてそれはどうやら、
「……
少女の声の主はいない。そして背後のとびらが音を立てて閉ざされた。
「……。行くしかねぇってことか」
そうつぶやいてサンリアを見たが、じーちゃんにうらぎられたかもしれない、という言葉にショックをうけているのか、うつむいたまま返事はなかった。
レオンは
もう長いことさまよい歩いた気がする。
同じ所を行ったり来たりしているような。
「なぁサンリア、何とか言えよ。俺迷路にがてなんだよ……
このまま出られなくなるかもしれないんだぞ。助けてくれよ」
背後に声を投げかける。サンリアはだまったままだ。泣きたいのをがまんしているかもしれず、振りむくのもためらわれる。しかし、それにしても……
何も言わない。
いきづかいすら……聞こえない。
(本当に俺が手をつないでいるのはサンリアなのか……? 実はまた何かのワナで、とんでもないバケモノになってるんじゃ……)
うかつに振り向いてはいけない予感。
彼はあまった右手をひそかに剣の
サンリアはさっきからずっとイライラしていた。
「ねぇレオン、ここさっきも通ったんじゃない? ほんとうに合ってるんでしょうね……」
しかしその問いかけにも答えず、俺についてこいとばかりにしっかり手をにぎって、前の少年はずんずん進んでゆく。
「ねぇ」
もうなんどめかの問いかけをしてから、サンリアはいやな
(これは、本当にレオンなのかな……さっきキョロキョロしちゃったからその時に入れかわって……前から見たら顔がなかったり、とんでもないバケモノだったりするんじゃ……)
先に動いたのはサンリアだった。
「もうっ!」
手を振りはらいウィングレアスをかまえる。
前の少年は振り向きざまに剣を抜き、
ものすごい
(うぅ、つよい……!)
レオンの顔の少年が剣をかまえ、まだ立ちあがれないでいるサンリアに突っこもうとする。
「レオン!? レオンなの!!?」
サンリアは
レオンの口もとがサンリアの名を呼ぶように動いた。
(もしかしたら……)
サンリアは自分の口をゆびさし、それから手でアヒルのくちばしのような形を作り口の前で数回開けたり閉じたりし、レオンの耳をゆびさして、自分の顔の前でダメダメというふうに手を振った。
(私の声は、あなたには聞こえないみたいなの。)
レオンはしばらくそのジェスチャーをながめてようやく理解し、首を縦に振ったあと同じジェスチャーをして返した。
(俺の声も、お前には聞こえていないんだな)
サンリアはうなずいた。
レオンは溜息をついたように肩をおとし、サンリアのとなりに座った。
(どうしよう……何もかもまっ白で目がおかしくなりそう)
部屋に入るまえに聞いた少女の声もウソみたいにしずまり返っている。
ふと、肩を
ぼうっとしていたサンリアは、ハッとそちらを見る。
レオンが
サンリアが彼をまじまじと見つめると、彼はうなずいたあと立ちあがりかべに向かい、グラードシャインを抜きはらって体ごと突っこんだ。
ドオォォン、という
「そっか!」
サンリアが
『なんてらんぼうな!』
あわてた少女の声がするのが同時だった。
『そんなことをしたら、城の地上もただじゃすまないのに!』
「閉じこめられたと
りんとした声に二人が振り向く。
そこにセルシアがいた。
『お前……!!』
「セルシア!」
「なんでここにいるの?」
「なぜって
『だ、だまされちゃダメよ二人とも!』
「だまそうとしているのはあなたでしょう。
しかしざんねんですね? あなたの力が強すぎて、念話が宮殿じゅうにまる聞こえでしたよ。
あぁ、よりにもよってヨナリアなんて名のるとはね……誰の記憶を読んだかバレバレだ」
『なにを……私がヨナリアって名前なのは元から……』
「この国ではね、ア音で終わる名前は男性なんですよ。ご存じでした?」
『……!?』
「
ヨナリアは僕の兄の名前ですよ。かわいかったでしょう?
あの人はほんとうに女の子のようでしたからね。よく親父さんと
でも、……あの人はもういなくなったんです。もう十年以上まえに旅に出て、それきりですよ」
灰色の髪の青年は天井をにらんで、うなるように話しつづける。まるでそこに敵がひそんでいるかのように。
「レオン君達があなたのワナにはまったのはすぐに分かりました。でも普段の僕なら彼らを見きわめるためにもう少しようすを見たかもしれない。
あなたがヨナリアを名のらなかったなら、ね!」
セルシアはティルーンから音の剣オルファリコンを抜きはなった!
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