恩人の救出依頼
『ワシの魔力ではあれには対処できん。かといってこの体では殺してやることもできん。
じゃから尻尾まいて帰ってきたというわけじゃ』
「強い魔力があれば治せるの?」
『わからん……あれはもうずいぶんと食いあらされとる。
病をはらうことはできるが、あいつ自身、もう長くはないという気がする……』
じーちゃんは
「俺、魔力なんかないけどさ。これが光の剣だっていうなら、暗闇病? よく分かんねぇけど、はらえねぇかな?」
『可能じゃろうな……それは、
「レオン君……」
セルシアがすがるような目つきでレオンを見つめた。
「まだ会ってからぜんぜん時間がたっていないのに、僕達のことで
僕は音の剣に出会って、サルレイさんの話はおとぎ話じゃなく、
「なげぇよ!」
レオンは軽く笑ってセルシアの言葉をさえぎった。
「最初からやるつもりだっつの。貸し借りとかなしで」
「……ありがとう……そうか、ありがとう」
セルシアは少し脱力したように、しかし
それから、彼はミリヤラとメイラエ氏とのふるい思い出を語った。
皆メーさんメーさんと呼ぶので本名こそ覚えていなかったものの、ミリヤラの笛がうまく楽団が人気なのは、
旅先で
「楽器作りのうでは文句なしに
彼が生きて帰るなら
セルシアはしずかに、しかし目には明らかな
「でも、どうして夜の民はメイラエさんをあやつる必要があったのかしら?」
『それは……む』
「……!」
じーちゃんが目を細めるのと、セルシアがすばやく立ち上がるのとはほぼ同時だった。
そくざに外に飛びだすも、またもや取り逃がしたらしい。
「しかし……音は消しておいたはずなのに、なぜ」
「またいたのか?」
『何じゃ、またとは?』
「さっきも
セルシアが男、と決めつけたので、レオンはちょっと意外に思った。
『何とまぁ。かの国からこんなはてにまで、金と黒、二人の
他にもおるやも……こちらの動きはほとんど
「夜の民かどうかは分からないんですけどね。変わった
『ホウ?』
首を半回転させて話を聞いていたじーちゃんは、さらに
「背後しか見ていませんが、上は黒一色の体にぴったりしたシルエット。
下はうす紫のゆったりしたサルエルを、足首より少しうえで布を巻いて締めていました」
「俺の世界での格闘家みたいなかっこうだな」
「じっさいそうかもね。小柄だけど
『飾り布、か。それはイグラスの
「では、やはり」
『この世界でそれがなじみのない
それだけでも十分イグラスの者たりえるが、さらにその情報……。
まず間違いなかろう、な』
「彼らが、メーおじを……」
『あるいはどちらか片方が、じゃな』
だまって聞いていたサンリアが、うーん、と声を上げた。
「でも、どうして、が分からないのよ」
『メイラエをあやつって……ワシらを
もしくは……世界ごと
なまじ魔力があるからの、あやつは』
「だとしたら」
急がなくてはなりませんね、とセルシアは弦楽器ティルーンを抱えあげた。
革の
それを革の
『行こう、子供達。夜になる前にケリをつけねばの』
じーちゃんの一声とともに三人はテントから出た。
灰色のフクロウの姿を見うしなわないように早足で
太陽はすでに塔の先端に引っかかっていた。
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