闇夜の森
「しかし……きったねーなー……」
落ち着いて改めて自分の格好を見直すと、返り血で服も体も酷く汚れている。
(仕方ねぇ、川に入るしかないか……)
幸い今は春の終わりでもある。
彼はせせらぎの音を頼りに川に出た。
まず手足を洗い、服を脱ぎ下着のみの格好でそれを川原で踏み洗う。
そして剣を水洗いし、タオルを濡らして汚れを落とす。
改めて見るとその剣は今は、月の光の様に淡く銀色に輝いていた。
(光の剣、か)
しかし、既に先程の戦いで
その曇りは彼自身の心を映してか、
少し
それから頭を水に突っ込み、髪と顔を洗った。途中で面倒になり、川のどこまでも
タオルを別で持って来ておいて良かった、と思う。リストバンドにしている小さい方のタオルは洗わないと使い物にならない。
やがて水から上がり、
下着を洗ってタオルの上で踏みながら、他の衣服を
洗い直して絞ったタオルを肩に掛け、下着姿で洗濯物を抱え元の茂みの奥に戻ると、髪を濡らしたサンリアが立っていた。パンツ一丁の彼を見て少し眉を
「早いな」
「私は貴方みたいに返り血浴びてないもの。そんなに一杯の
「そか。でもさ……風邪引くぞ、ほら」
レオンはタオルを橙色の頭の上に被せた。サンリアはさっと頭に
「ありがと……」
「どったまして。じゃ、俺はこっちの
星明かりだけでは彼女の顔はよく見えない。
目を細めているのは……眠いのか、泣いているのか、笑っているのか?
「……おやすみ、レオン」
「おう」
暗く、消え入りそうな森の中。
何処かでフクロウが、嬉しそうにホウと
サンリアは過去の体験を夢に見た。
少女は、物心ついた時から狙われていた。
それを
祖父も、その相棒も、嫌いだった訳ではない。
しかし、好きか?と問われると、素直に
だから彼女は自分に言い聞かせる。
「仕方ないでしょ、家族なんだから」
十と一の誕生日を少し過ぎた頃だった。
彼女が祖父と共に住んでいると勘違いした、〈神の鳥〉ヨルルを狙う
彼女を
何故殺さないのか……、ああ、また
クルルはもう眠ってる。あの子は普通の鳥だ。私は独りだ。
そう、じーちゃんの鳥を差し出すまで、これが続くんだ。
彼女は理解した。
次に、どうするべきかを考えた。
こいつを
彼女は心を
未明、男が去った後、力尽きるように眠りに落ちる彼女の目尻から、一筋涙が
恐怖と苦痛と嫌悪の涙はとっくに
それは、誰かの死を
一人では
いざ
「お、俺、人を殺しちゃった」
「いいえ、私が殺したのよ。ミノミオは死体を殴っただけ。私が合図をした時点で、こいつは死んだんだわ。だから、ね? ミノミオは悪くない」
「う、う……サンリア……サンリアぁ……」
少年は感情が高ぶっているのか、さも当然の権利かのように彼女に抱き着いてきた。
今回は彼の手柄なので、
「俺、お前が成人したら、嫁にしてやるからな。村長になって、こうやって、一生、
何も嬉しくない。村長候補を諦めろと、私の将来の夢を
「……きよ。起きよ、サンリア」
祖父の声に気付き、サンリアは飛び起きた。いつの間にか朝になっていた。死体もそのまま。ミノミオは先に起こされたのか、
「ワシの知らぬ間に、
サンリアは気が動転していたが、言い付けは絶対だ。
(何でじーちゃんが私の家に。ミノミオはじーちゃんに何と言い訳するのかな。人を殺したのは
部屋に戻ると、ミノミオの姿も死体も
じーちゃんが
「……戻ったか。サンリア、こっちにおいで」
サンリアが祖父の前に座ろうとすると、祖父は
「ワシも男じゃから、今は嫌かもしれんな。……
じーちゃんのせいじゃない、と言おうとしたサンリアの両目から、
「もうこんなことをせずとも、サンリアが戦えるようになるまで、ワシが護ってやろう。家には
ミノミオは、今後一切私的にサンリアに
村長候補としては
皮肉なことに、彼女の
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