5、映画のような世界

 バスに揺られ、首都ヘルシンキへ向かう途中、バスに流れる電子アナウンスはフィンランド語、スウェーデン語、そして英語だった。


 英語が流れないアナウンスもあった。


 停車予定のバス停の案内が運転席前のディスプレイに表示されていてもフィンランド語とスウェーデン語で、まったく見慣れない単語の並びに初めて異国に来た実感があった。


 十月の日本は温かい秋だったけど、フィンランドという国の十月は想像以上に寒く、絶対に着ることのないであろうと念のために持ってきた冬用もこもこコートをホテルに付いたら出そうと心に誓った。


 バスのなかでは、きっとフィンランド語なのだろうなと思える言語が飛び交っていた。


 優しく歌うような話し方でなにを言っているのかはさっぱりわからないけど、とても耳に優しい。


 窓の外に広がる初めて見るフィンランドの壮大な景色を眺め、まるでムーミンの世界というか、映画の世界にきたようだとふと思った。


 これが、わたしと大好きで大好きで仕方のないフィンランドの出会いだった。

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