17、世界遺産の島、スオメンリンナ
スオメンリンナ島はヘルシンキのマーケット・プレイス(市場)から船に乗って15分ほどの位置にある要塞の島である。
『スオメンリンナの要塞』
そこはバルト海に浮かび、世界遺産に登録された島なのだけど、未だに大砲やら戦った様子が色濃く残っている。
この大砲の向こうに、あの国があるのだろうなと想像したらぞっとした。
ここで、敵襲の襲撃を阻止しようとしていたのだろうなと想像がついた。
一隻たりともヘルシンキに近づけないように。
悲しい歴史が繰り返されないよう、この光景を目に焼き付けたいと思った。
とはいえ、そんなシリアスな光景を目の当たりにする直前にもかかわらず、脳天気すぎて自分が嫌になってしまったのは、チケットを買い間違えてまさかの観光船に乗り込んだことだ。
ワインを片手に老夫婦が談笑する隣で、想像以上に高いだろ……そして、たどり着かないじゃないか……とふかふかの椅子に座り、震えていたわたしは、豪華な船に乗って六つある島を見て回る贅沢な航海に出た。
ただでさえ、未知の生物がいるかもしれない海上は怖いというのに、予想よりもずっと長い時間海の上にいることになる。
今は定かではないけど、わたしが訪れたときは(コロナ前)はトラムの乗れる一日乗車券さえあれば、フェリーにも乗れるらしく、スオメンリンナ島にだけ行きたい場合は断然お得に早く(15分ほど)向うことができる。
ずいぶん良いご身分な体験をしたわけである。
観光船から途中下車が許される場所だけ降りて観光をした。
その一時下車場所が、スオメンリンナ島だった。
降りて回っても次の観光船に乗り込めば良い。
だからフェリーに比べて断然本数は少ないけど、最終時刻にヘルシンキに帰ろうとわたしは決めていた。
『これとこれとこれが帰りの時間だよ!!』
『よく見て!!』
と、帰りの時間を船のおじさまにしつこいほど聞かされる。
『絶対だぞ!! もし遅れたらあのフェリーのところでヘルシンキと騒ぐんだよ!!』
『フェリーに乗るには……』
と本当に心配されることになる。
あとできいたら、ずいぶんな子どもだと間違えたらしい。(アラサーですが)
ここもフィンランドの人の心の温かさが胸にしみる瞬間だった。
スオメンリンナ島には、驚くことに日本の茶室(裏千家)がある。
かつておばがそこで茶会に参加したことを聞いていたから見てみたくなった。
秘密の通路を使ってその場所に向かうらしく、何度も何度も聞いていた場所に向かってもあるはずの茶室は見つけられなかったけど、わたしは何度も何度まそのエリアをぐるぐる回った。
島の中には、観光客だけでなく娯楽を楽しむフィンランド人の観光客もいる。
戦いの跡だけではなく、素敵なレストランやカフェ、お店や博物館などもあり、なにより景色が美しい。
ほんの少し風は強く、ひんやりしていたけど、ただそこにいるだけであっという間に時間が流れてしまうほど、穏やかな気持ちになれる場所だった。
そして、その島に住む人達もいる。
そこで訓練を受けているのであろう迷彩服を着たいかつい体つきのお兄さんたちも見かけた。
生活のエリアを騒がしくしてしまってすみません。
しかしながら、歴史深くて美しいこの島がとても好きになりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます