16、地元のみなさんとサウナ体験

 はじめてサウナに挑戦するときは、絶対に地元の人達のいるところにしようと決めていた。


 きっとフィンランド語が飛び交っていてわからないのだけど、フィンランドのみなさんの日常の一部を垣間見てみたいと思っていた。


 地下鉄に乗って(おかげさまでマリメッコへ行ってから地下鉄へは乗れるようになった)、最寄り駅のヘルシンキ大学駅(いつの間にか最寄り駅さえ変わる)から二駅先の駅まで向うこととなる。


 だいたい5分くらいの距離だ。


 駅から出て、事前にインプットしてきた地図を脳裏に思い浮かべ、目的地へ向かう。


 その道中もまわりの景色の写真をたくさん撮っておく。


 万が一迷ってしまっても良いように、こんなときこそ『ヘンデルとグレーテル方式』を万全に活用する。(のちに良い思い出になる)


 街を歩いてちょっとだけ住宅街に入って、てくてく進んだ先に『SAUNA』という文字が見えた。


 目的地に到着してひとり喜んだのもつかの間……店頭で裸の男性たちが椅子に腰掛けている。


 とてもリラックスをしているように見える。


『えっ……』


 思わず変なところから声が出た。


 熱した体を冷ましているところだったのだと今ならわかるけど、当時のわたしには恐怖の壁でしかなかった。


 フィンランドの方は仲良くなるととっても心温かく素晴らしい人達が多いけど、日本人と似ているところが多いらしく、シャイな部分を持ち合わせている人が多いらしい。


 突然謎の外国人がカメラ片手に現れたためか彼らもじろっとこちらを見て、また会話に戻っていく。


 (撮りません。撮りませんとも!!)


 決してほかのヨーロッパの国のように気軽に『ハーイ!』とは言ってくれない。


 すさまじく勇気を出して、闘牛に参加する牛のような勢いで入口に突入した。


 金額は日本円で千円くらいだったと思う。


 店頭のお兄さんも愛想がなかった。


 女性用、男性用のほかに、混同のものもあると説明を受けたけど、お兄さんの耳のピアスが大きすぎてそれどころではなかった。


 いや、混同だなんてハードルが高すぎて、迷わず女性用のサウナに向かう。


 海外で温泉に入るときには必ず持ち歩いている水着に着替え、いざ、出陣!!


 と、温泉の聖地・日本からやってきたわたしは、ドアを開閉すると同時に凄まじい羞恥心を味わうこととなる。


 ドアを開けると、みんな一糸まとわぬ姿でサウナを満喫していたのだ。


 えっ!と、場違いな様子がこの上なかった。


 銭湯に水着でやってきた変な外国人である。


 『リラックスをする場にそんな窮屈なものを着てきて!』


 と近くでくつろいでいたおばさまが笑った。


 隣りにいたおばさまも笑っていたため、脱いできますとそそくさとその場をあとにしたわたし。


 あとあと知るのだけど、映画『かもめ食堂』のサチエさんが作中で泳いでいたプールでは、裸で泳いでいる人もいるそうで。


 そんな光景を見たらまた目がギャグ漫画のように飛び出していたことでしょう。


 そんなこんなで、そのあとはこっちにきなさい!と言ってくれたおばさまたちにまざってフィンランドのことをいろいろ教えてもらうことになる。


 おすすめのお店とか、日本のイメージ、ムーミンがそんなに人気で驚いたとか。


 この街に来て、久しぶりに笑ったと思う。


 シャイだと聞いていたけど、サウナのひとときもみんな心をはだかにしてオープンマインドになれるのかもしれない。


 ぼんやり考え、ゆったり穏やかなひとときを満喫した。

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