第37話 笑顔が。
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「なんと。半額? それは本当なのか!?」
「ええ旦那様。来週から一週間、新発売の商品以外は全て半額で販売するとのことででございます。今あちらこちらで宣伝をしている様を確認いたしました」
「あそこは確かグラブル商会に売ったのだったな」
「はい。今はその分家の商会が経営しているようです」
「いくらで売ったんだったか」
「現状の資産を勘案した程度でしたでしょうか」
「であれば半額で販売などしたら赤字だろうに。血迷ったか」
「エリカティーナは客足がかなり遠のいておりましたから、苦肉の策やもしれません」
「にしても、だ」
ラインハルトは少し思案すると、おもむろに顔をあげ。
「半額であれば仕入れ値よりも安くなるな」
「ええ旦那様。値付けが当時のままだとすればそうなりましてございます」
「ふむ。トマス。お前数人連れてその半額になった商品を買い漁ってこい。なに、商会の本店に並べて置けばいい。七掛けで売っても利益になるだろうさ」
「しかし旦那様」
「なに、元はブラウド商会の商品だったものだ。買い戻しても悪くはなかろ? せっかく安値で放出すると言ってるのだ。この機会を逃すことはあるまいよ」
「承知致しました。では当日は王都三店舗周辺七店舗全て手分けして回るとしましょう」
「ああ、頼む。しかしバカな話だ。いつのまにかセバスが向こうに雇われているのにも驚いたが、一度半額などにしてしまえばもう正規の値段では買ってもらえない。セバスもそれは経験しただろうに」
「客も、それが当たり前だと思ってしまいますからね」
「まあいい。それよりも例の件はどうなっているか」
「はい旦那様。順調に進んではおりますが、先方からはさらなる出資を求められております」
「そうか。大黄粉の生産が軌道にのりさえすれば状況は変わる。今のうちに出資を増やすべきであろうが……。やはりエルグランデ家から資金を調達する算段をたてないと、だな」
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「いよいよ明日が本番だ。デザイナーたちの新しい目玉商品もかなり集まった。どうするアリーシア、明日は」
「うん。マクギリウス。やっぱり様子を見てまわりたいわ。ここでやきもきしているだけじゃ嫌」
「そうだね。じゃぁ一緒に街に繰り出そうか。せめて王都の三店舗くらいは見てまわろう」
「ありがとう。ついでにブラウド商会の様子も見てきてもいい?」
「気になるの?」
「うん。まあ、ね」
「わかった。じゃぁ念入りに変装しないとだな」
「そうね。マクギリウスは目立つから」
背が高いマクギリウスは街を歩くだけでかなり目立つ。
どんな扮装しても隠せないから。
「まあ任せて。要は俺だとわからなければ良いだけだから」
それはそうだけど。そう思いつつも。
一緒に街を歩けるのがすごく嬉しくて。思わず顔がにやけてしまう。
「笑顔が自然にでるようになったね。良かった」
唐突なそんなマクギリウスの言葉に、どきっとして。
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