第36話 【Side】マリアーナ 3。
お姉様も幸せになれる。
わたくしも幸せになれる。
あの時までは本気でそう思っていた。
バカだった。そう気がついたのはもう後戻りできなくなってからだった。
「どういうことなのです! お姉様が出て行かれるだなんて。そんなの、聞いていた話と違うじゃありませんか!」
思わずそうお父様に怒鳴ってしまったわたくし。でも、すぐにしゅんと落ち込み反省する。
きっと、たぶん、わたくしがバカだったのだと。恋に浮かれ取り返しのつかない過ちをしてしまったのだと。
そしてもう、なにもかもが遅いのだ、と。
王国祭での婚約披露。
これはラインハルト様の要望だった。
アリーシアお姉様がいなくなってもブラウド商会はなんら変わらない。
トランジッタ家とエルグランデ家の協力関係はこれからも継続する。
だから安心して欲しい、と。
関係各所に宣伝する必要があるのだと、そうおっしゃられてお父様も同意した。
お姉様も自分がいなくなった後のことを心配なさるだろうから、安心してもらえるから、と。
そう言い含められて。
でも。
それが間違いだったって気がつくのは遅かった。
王国祭でのあの取り乱し様。
そして領地に引き篭もってしまったお姉様。
何度も手紙を送ったけれど、読んでもらえたかどうかもわからない。
怒っていらっしゃる。それだけはわかる。
わたくしたちの結婚式にもとうとうお顔を出してくださらなかった。
本当はラインハルト様の事を愛していらっしゃったのだろうか。
だとしたら、わたくしはなんて事を……。
いや、もしかしたら恋はしていなくても、お父様がフランソワ様に見せていた愛情のようなものはあったのかしら。
だとしても、やっぱりわたくしがお姉様の幸せを奪ってしまったのには変わりがない。
浅はかだったわたくし。そうずっと後悔していたから、
「アリーシアをもう一度呼び戻そうと思う。構わないかい? マリアーナ」
そんなラインハルト様の言葉に二つ返事で同意した。
お腹の中にはもうラインハルト様の子供がいる。
わたくしが身を引くことはもうできない。
でも。
フランソワ様とデリア母様のように暮らすことはできるはず。
そう思ったのだ。
だけれど。
結局お姉様は帰って来なかった。
迎えにいったラインハルト様も、お帰りになってから人が変わった様に態度が冷たくなって。
わたくしはもう、どうしていいのかわからなくなっていた。
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