第30話 王都へ。
燦々と輝くお日様のもと、王都にやってきたわたくしたち。
中央公園の噴水がキラキラと光を反射して、その涼しげな水しぶきを求めて集まってくる子供の笑い声がこだまする。
平和、だな。
そんなことをふと思い。
子供、欲しいな。
そんな気持ちも湧いてくる。
隣にいるマクギリウスも公園で遊ぶ子供たちを眺めてるけど、わたくしと同じ気持ちでいてくれたら嬉しいな。って。
「さあ、気持ちのいい夏日ですけど、とりあえずさっさと目的地に行きましょう? お嬢様は今まであまり日に焼けることもなかったのですから、油断すると後が大変ですよ?」
そういうフィリアに促されるまま早足で目的地に向かう。
馬車で目の前につけるのは目立ちすぎる。
どこでどんな人が見ているかわからない。から。
街の入り口で馬車は預け、後は徒歩で向かっていた。
目的地は王都の中心街より少しだけ横に外れた場所にある、マギアアリアの本店だった。
宝石と装飾、そして魔法具を扱うマギアアリア。
こちらのブランドとそして服飾のエリカティーナを買収し、無事アリリウス商会を立ち上げたわたくしたち。
セバスに任せると言っても彼に細かく指示を出さなければいけないわけで、領地に籠っていたらそれもままならない。
それもあって思い切ってこうして王都にまで出てきたのだった。
かといって、エルグランデ公爵家に帰るわけにもいかないし、マクギリウスにしてみても王宮に帰るわけにもいかない。
そこでマギアアリア本店の上階にわたくしたちの住まいと商会の本部機能を兼ねたお部屋を用意することにした。
内装にそんなに時間をかけるわけにはいかなかったし中に入る人間は極力減らしたかったのもあったから、殺風景なお部屋だったけれどそれでも。
ここがわたくしたちの新しい住まい。
中に入った時はそんなふうに感慨深くて、部屋中を探検しまくったものだった。
一応わたくしの寝室とマクギリウスの寝室は隣り合っているけれど別の部屋となった。
まだ正式に結婚したわけじゃない。お互いに好きだって確認は、した、けど?
それでもまだ婚約だって結んだわけじゃないもの。
王族であるマクギリウスと結婚するのであれば、それこそちゃんと兄王陛下にご挨拶にいかなければいけないだろうし、まだご存命の前王妃様、マクギリウスのお母様、わたくしのおばあさまにもちゃんとご挨拶にお伺いしなければだと思う。
それに。
そんなことになれば実家の両親に内緒にしておくわけにもいかないだろう。
お祖父様はそのへん、お父様にはどうお話ししてるんだろう?
それもちょっと怖くて聞けなかった。
だから。
わたくしたちはまだ清い交際だ。
ほんと、信じられないくらい清い、ままだった。
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