第4話一日で終わる体

 生理が始まった翌日、ボクは男になっていた。生理が一日で終わったのは僥倖。アレはホント辛い女性は辛いんだよねぇ…。ボクもこんな体のせいなのか血の量も多くて、そのうえ痛みが酷いので嫌になるんだ。薬もボクは飲めないからね。


 お医者さんに言われたんだよね。体がこんな感じだから一気に終わらせようとしてるかも知れないって…。


 まあ、とにかくそんな感じ。


 ―んで、今日は寝坊せずに学校に行く準備を済ませて優愛ちゃんの家の前で優愛ちゃんが出てくるのを待ってたんだけど…


「お、おはよう…きょ、今日は…星奈…君…なんだね…」


「おはよう…そうなんだけど…」


 ボクを視界に捉えて早々言葉がつたない。心なしか顔も普段より赤みがかってる気がする…


「ちょっと、ごめんね?」


「…えっ?」


 優愛ちゃんの額に額を合わせる…。


「ふぇっ!?」


 若干熱っポイ気がする…


「優愛ちゃん…熱あるんじゃない?大丈夫?」


「なななななな、ない!?熱なんてないからっ!?これは…別の意味で熱っポイだけで…はわわっ…」


「―ったく…2人で何をイチャイチャしてるんだか…」


「あっ、おはよう…哲っちゃん」


「うぃ〜す!」


「…まだ来なくて良かったのに…」


「…何か言ったか、優愛?」


「…別に」


「そういえば…星奈は生理一日で終わったみたいで良かったな?」


「…哲也…最低ぇ〜」


 ボクが口を開くよりも早く優愛ちゃんがそう言った。確かに今の発言は女性からしたら遠慮して欲しいと思うよ、哲っちゃん?


「なっ!?」


「デリカシーを考えてよね?」


「俺はだなぁ〜…星奈が辛そうだったから…」


「昨日はイヤらしい目で見てたもんね?」


「くっ、優愛なんか放っておいて、行こうぜ、星奈」


「なんですってぇー!」


「なんだよっ!」


「ああ…もう、ほらっ2人共行くよ?」


「あっ…ま、待って…星奈君」



 そんな感じで朝から賑やかに学校へボク達は向かった。いつまでもこんな時間が続けばいいなと思いながら…




***


「おはよう…って、どうかしたの優愛りん?朝からぷりぷりしちゃって…」


「あっ…おはようみっちゃん。べ、別に私はぷりぷりしてないけど…」


 私の親友のみっちゃんが教室の席へ着くと同時に話掛けてきた。そして辺りを一度見渡してから、


「―はは〜ん…今日は星奈だからイチャイチャしたかったのに出来なかったから不機嫌なんでしょっ?」


「うっ…」


「分かりやすいよね、優愛りんは…」


「ち、違わないけど違うんだよ?」


「何言ってるのか分からないんだけどっ!?星奈りんが星奈君になるとポンコツになりすぎでしょっ!?」


「そ、そんなこと…ないもん」


「どの口で言ってるんだか…それで、朝からどうしたの?」


「あ、朝から星奈君がね…私の額と額を合わせて熱を測ってくれて…」


「どうして朝からそういう事になったのか知りたいけど…それ、どこのラブコメ!?最早ラブコメよね!?そんなのラブコメでしか見た事ないんだけどっ!?それで付き合ってないのが不思議で堪らないんだけどっ!?とっとと告白すればソレってイケるよねっ!?」


「ちょっ!?みっちゃん!―声っ!声大きいからっ!」


「声大きいも何も…優愛りんが星奈君の事好きなのはクラスのみんな気付いてるでしょっ!?」


「そんなわけ…」


「バレバレでしょうに…」


「そ、そんなに…分かりやすいかな?」


「まあ、分かりやすいよね…星奈君は気付いてないだろうけど…」


「そう…だよね…」


 それは知ってる…。星奈君はそういうのに疎いというよりは自分の体の事を気にしているから…


「私は…ゆっくりと関係を深めていくもん…」


「あんまりゆっくりとしていると哲也君に取られても知らないよっ?」


「!? た、確かに…」


 哲也は油断ならない…なんたってライバルなのだから…


「ううっ…頑張るもん」


「星奈君の時もいつもみたいにすればいいだけでしょうに…」


「だって…意識しちゃって…」


「こりゃあ〜まだまだ掛かりそうね」


 他人事だと思って…でも、私ももう少し積極的にならないと取られちゃうよね?頑張らないと…


 私は哲也達と楽しそうに話している星奈君を見ながらそう思った…。



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