第18話 護送
クモコのエンジェルバタフライの引越し先が決まり、【
「エンジェルバタフライは
「じゃあ【
ゆっくりと移動するしかないが、魔物が蔓延るこの深淵でそれは中々過酷なものだ。けど、やるしかないか。
「よし、そんじゃあ護送しますか!」
蝶にモテモテなスティックとラズリをシロの上に乗せ、他は周りを囲み、俺は先頭を歩く形となった。
コツコツと鳴り響く足音と、たまに上から滴り落ちる水滴の音が耳に入る。今のところは魔物の襲撃が無く安全だが、この静寂は一瞬にして終わりを迎えた。
『スンスン……む、何か来るぞ!』
ズシンズシンと地響きが遠くから近づいてきていたが、俺たちの存在に気がついたらしく、一直線に向かってきている。
まぁだが、
『ヴォオオオオオ!!!!』
「うっわ、なんだアレ!? キッショ!!」
『魚……ですな』
『コケェ……』
向かってきている魔物は魚類系だ。しかし、胸ビレの後ろビレがない代わりに、人の腕と足が生えた実に不気味な魚だ。
いったいどんな進化をしたらそうなるんだ? 怪しい人体実験とか
『あれは魚人族のなり損ないの魔物であるな』
「おそらくじゃが、
「あれは食べれるのでしょうか!?」
『……あまり美味しくないからやめたほうがいいと思うぞ、ラズリ殿』
そんなことをしているうちにすぐ近くまで近づいており、魚は拳を俺に向かって振り下ろしてきていた。
しかし、拳は俺に近づくにつれサラサラと消滅し、ついには片腕が完全に消失する。
「魚風情が、俺に一撃入れれるとでも?」
『ヴ、オオォ!!?』
「俺の魔力は特殊でな、俺次第で大抵のものは魔力を放出するだけで消せるんだぞ。こんな風に」
――バリバリバリッッ!!!!
魔力を放出すると、魚の魔物は一瞬にして蒸発する。バチッバチッとしばらくの間、魔力の残穢が火花を散らしていた。
クルッと後ろを振り向くと、なぜか皆は魚を見た時よりも引いている顔をしている。
『ゴンザレス殿を手懐ける時、本当に手加減していたのだな……』
「あの時、今と同じくらい魔力を出していたら一瞬で消されてたんですね……」
『コケッ!? ……コエ〜』
「だから言ってんだろ、俺は邪神だって。おら、さっさと進むぞー」
再び足を動かし、鳥居を目指して進む。
その後、何度も何度も魔物が襲いかかって来ては倒してを繰り返す。その相手はどれも食材にできるものではなく、気分が下がるばかりだった。
あと少しで辿り着こうとした時、ようやく食材になりうる魔物が現れる。
『ブモォオオオオ!!!』
「おぉ、あれは俺でも知ってるやつだな」
「破壊の猛牛――ベヒーモスじゃな。妾も久々に見たぞ」
俺たちが建てた家と同じくらい巨大な筋骨隆々な肉体、湾曲したツノ、赤く煌めく瞳。
破壊の猛牛とかいう二つ名が付いているが、破壊神である俺とは全く関係がない魔物だ。使い魔でもなんでもない。
だが、これだけは確かだ……。肉が美味い!!!
「ラズリ、この牛はめちゃくちゃ美味いんだぜ」
「そうなんですかっ!? わぁ……そう言われたら、あの魔物さんがぷりぷりの肉塊に見えてきました……!」
「ラズリに美味い飯を食わすために、食材になってもらおうか」
――ヒュッ……ドコォォオン!!!
先程の魚とは比べ物にならないほど高スピード且つ、力強い拳を振り下ろすベヒーモス。魔力を放出してもコイツは消えなかったので、人差し指で拳を受け止めた。
魔物の中でも上澄みの方か。ま、山の上に登ろうが、遥か上の月には届かないがな。
「よっこいしょっ」
俺は空いている片腕を振りかぶり、腰の入っていないパンチを放った。
――パァンッッ!!!!
ベヒーモスの腕は爆発四散し、生暖かい血が撒き散らされる。血は俺の魔力で消滅させられ、お気にの服に返り血がつかずに済む。
ベヒーモスは狼狽え、後方に下がって畏怖した様子だ。
「今更恐れ慄くか。ま、出会ったが最期ってことだな。【
――キンッ。
俺が指で空を斬ると空間が歪み、ベヒーモスの頭がべちゃりと地面に落ちる。
ベヒーモスの牧場というのも考え、飼育するという案も出たのだが、流石に難しすぎそうということで大人しく食材になってもらうことにした。
「ぃよ〜し! 絶品牛肉、ゲットだぜ!」
「わ〜い! お肉っ、お肉っ♪」
『ベヒーモスは冒険者間でSランク級の魔物と言われているらしいのですが、ミスター・ニーグリの前ではDランクほどですかな』
「肉は妾も好きじゃぞ。振舞って欲しいの〜♡」
ホクホク顔で【
今日も豪勢な食卓を囲めそうだ。
『お、しかもこの辺りはもうトリイの近くであるな!』
『コケー、コッケー!』
「そうだな、護送完了だ」
数歩進むと、亜空間に繋がる鳥居が目に入った。
これにて、エンジェルバタフライの護送完了だ。
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