第8話 BBQ
すっかり辺りが暗くなった頃、俺はとある魔道具を取り出してそれをテントの外に置いた。
足がついた箱のようなもので、中には炭が入ってパチパチと燃えている。
「ニーグリ様、それは一体なんですか?」
「グリルっていうものらしい。この金属の上で肉を焼くんだ」
「お肉!!!」
スライスされている収納していた肉を置き、ジュワーッという音を立てて焼き始める。ラズリは美味いものに目がないらしいので、キラキラとした眼差しでお腹を鳴らしていた。
肉だけではなくちゃんと野菜も焼き、栄養が偏らないようする。
そう、これは〝
『ニーグリ殿ー。魚が取れたぞ』
「おー、綺麗な川魚だな。お前らが獲ったのか?」
「はい!」
『うむ』
『コケッッ』
「ありがとな三人とも」
魚はどうしたものか……。料理本を開いてじっくり決めてもいいが、ここは無難に魚の串焼きにするか!
そうと決まれば早速内臓やら骨やらを消そうと思ったのだが、ラズリが何か言いたそうにしている。
「私、魚は捌けますのでお任せください!」
「え、でも
「あ……。……そ、そうですよね……。私が出る幕でもないですよね……」
「んッ!?」
ズーンと落ち込んで今にも辺りを包んでいる暗闇に姿を消しそうになってしまった。シロとゴンザレスからジトーッと視線が送られる。
このままではまずい……。ラズリに嫌われてしまう!
「い、いや、この魚小さすぎて
『ニーグリ殿、其奴は死んだ魚の目をしているぞ』
『コケー……』
「外野がうるさいな。捌いて欲しそうな目をしてんだよ!」
自分でもよくわかんないことを口走っているのはわかっているが、これでなんとか元気を取り戻してほしい。
チラリとラズリを見てみると、目を輝かせて鼻息をフンスフンスと立てていた。
「ふふ、任せてくださいっ!!!」
「ウ、ウン、ヨロシクー……」
チョロくて少し心配になるが、何はともあれ良かった。
肉と野菜を焼いている横で台とまな板を出し、そこでら捌いてもらうことにした。
ラズリに魚と包丁を手渡すと、手際よく鰓に包丁を入れ、腹を裂いて内臓を取り出していた。かなりの数の魚がいたが、この調子だとすぐに済ませてしまいそうだ。
魚の内臓はシロが食っているが、舌が肥えているのか微妙な表情をしている。
『コケコケ』
「なんだゴンザレス。悪いが
『コケェーッ』
「『ちぇーっ』じゃない。チキンが肉食っちゃいけねぇだろ」
不貞腐れながらパンを食うゴンザレスを見ているうちに、肉はすっかり焼けていたようだ。
「ラズリ、魚を串に刺すのは任せとけ。ほい、肉」
「わぁ!! はっ。で、でも私には魚の使命が……」
「偉いぞラズリ。けどな、シロを見てみろ」
『ハッハッハッハッハッハッ』
「全ての肉を喰らう目をしてるぞ」
「〜〜っ! ……シロ、そのお肉は私のです!!!」
シロの作戦が効いたようで、肉を追って魚を離れた。
ナイスだシロ。……作戦、だよな? 本当に肉が食いたかったってことはないよな? 目ぇ逸らすなオイ。
「……あ、そうだ。ラズリ、これに浸けて食うといいぞ」
「何ですかコレ?」
「これをかければ何でもおかずになってしまう伝説の液体……〝焼肉のタレ〟だッ!!」
「焼肉の、タレっ!!?」
取り皿にソレを垂らし、ラズリに手渡す。肉をそれに浸すと、生唾を飲む。
恐る恐る口に運ぶと、途端に頰がとろけそうなふにゃふにゃな表情になった。
「おいひいれふぅ……!」
「野菜も食えよー?」
魚を少しくねらせて串を刺し、グリルで炙る。
串が余っているし、何かに使えないかと思って思考を巡らせていると、とあるものが収納されていることを思い出した。
真っ白でふわふわしている四角形の物を取り出した。これはマシュマロというものらしく、甘くて美味しい代物だ。
串の先端にそれを刺し、同じようにグリルで炙る。
『び、美味であるッ! 無限に食えるぞ……!!』
「シロは体を小さくして正解だな」
「うぅ……私も体を小さくしていっぱい食べたいです……」
「(……今度生物を縮小させる
第一陣を焼き終えた後、俺も肉を食いながらそんなことを心中で考えていた。
「ラズリ、マシュマロも食ってみるか?」
「ましゅ、まろ? よくわかんないですけど頂きます!」
ラズリもだいぶ遠慮がなくなってきたみたいだ。いい傾向だな。
ふふんと鼻を鳴らしながら串に刺したマシュマロをラズリに手渡す。ジーッとそれを数秒眺め、匂いを嗅いだ後にパクリと食べた。
「〜〜っ!? あ、甘いです! しかもふわふわした食感で……。はわーー」
『未知の食べ物で飛んでおるぞ』
「久々に食べたけど美味いなー! やっぱ甘いもんは良い……」
『コケ』
美味いもんを食っている俺に対して、ゴンザレスはしきりに足首を突いてきている。しょうがないので魚をほぐしたものを少し分けてやった。
しっかし……良い空間を残してくれたもんだ。
満点の星空の下、美味い飯を食えるなんてな。最初は地上に出たくない俺への当てつけかと思ったが、今では感謝してる。
俺たちは余っていたマウントボアの肉を全て焼き、腹がいっぱいになるまで食い続けた。
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