第5話 ベーコンと目玉焼き乗せ食パン

 結界を展開した後、【無限収納ストレージ】から料理器具を取り出し、早速スタートだ。


「ラズリ、卵割れるか?」

「えっ……(金だし)む、無理です……」

「ふっ、まだ小さいし仕方ないか。大丈夫、いつかちゃんとできるようになるさ」

「そういう問題じゃないですニーグリ様」

「え?」


 卵な俺が割って焼くことになった。ゴンザレスにもう二つ頑張って卵を産んでもらい、純金の卵を割って油を敷いたフライパンに乗せる。

 中身はちゃんと黄身と白身の卵だが、キラキラと輝いて見えた。栄養価が高いのだろう。


「ラズリ、このベーコン切っといてくれ」

「はい、わかりました」

『……我は何をすれば良いか』

「シロはゴンザレス見といてくれ」

『コケーッ!』

『承知した。って、このチキン重っ』


 誤ってローストチキンにならないように、簡易キッチンから遠くのところでシロコに見張っててもらう。


 フライパンの上でジュワーっと音を立てて、白い絵の具が垂らされたかのように半透明の白身が純白に染まる。

 フライパンの上には三つのお天道様がおり、十分に火を通したら三分割した。


「ラズリ、ベーコン切れたか?」

「はい。ですがお腹が空きすぎてこのまま食べたいです」

「ダメだ。お前には美味いものしか食わせたくない」

「っ! は、はい……わかりました」

『ふっ、ニーグリ殿……罪な神であるな。いや、邪神か』


 渡されたベーコンをフライパンに乗せると、肉汁が出るわ出るわで大変美味しそうだ。赤い身が変移して行くにつれ、肉の良い香りが漂う。

 それに伴って、ラズリの腹の音もどんどんでかくなってきていた。


「よし、そろそろパンを焼くか」


 真四角の火の魔石の上に食パンを置き、焼き目をつける。純度が高い魔石ゆえに、一瞬で裏返したらちょうどいいきつね色に変わっている。

 それを三枚焼きいたあと、しっかり炒めたベーコンをその上に乗せる。さらにその上に目玉焼きを乗っけて完成……ではない。


「お、美味しそうです……!」

「まだまだ! ここに秘伝のウスターソースを、ッどーん!」

「す、すごい良い香りがしますニーグリ様!」

「そうだろそうだろ!」


 ウスターソース。野菜と果物に香辛料を含ませて熟成させたソースだ。

 無限にあるわけではないので無駄遣いしないように使わなければならない。


「そんなこんなで完成だ! 〝ベーコンと目玉焼き乗せ食パン〟ッ!!!」

「じゃるり……」

『良い出来前だな』

『コケコッコーッ!!!』


 簡単な朝食だが、具材は豪華だろう。マウントボアのベーコンにゴールデンチキンの目玉焼きだ。美味しくないわけがない。


「シロー、食べるぞー」

『む? 我は別に魔力だけで生きていけるが……』

「それは俺も同じだ。だけど、美味を食すのも良い退屈しのぎになるんだぞ」

『……ニーグリ殿がそこまで言うならば』


 ちなみにゴンザレスの分は無い。流石にチキンは草食だし、口にも会わないだろうと思ったから。


 机と椅子を取り出し、席について料理を囲む。

 ラズリは昨日ので罪悪感というたがが外れたのか、欲望の眼差しを料理に向けて腹を鳴らしている。いい傾向だ。


「んじゃ、食べようか」

「はい! はむっ、んむっ……っっ!! おいひぃれふ!!!」

「それは良かった。あむ……おー、美味い」


 ガツガツと一心不乱に朝食を食べるラズリ。具材が良いものなので、こんな簡単な料理でも絶品に仕上がったのだろう。

 シロの分の朝食を手に持ち、大きな口に近づける。シロは手で持つことができないので、しょうがなく食わせることにした。


『む! 確かに美味であるな。一口で無くなるのが悔やまれる』

「小さくなればいいだろ」

『ああ、そうか。次からはそうしよう』


 擬人化という案も出たが、こいつはあくまでペットだ。愛玩動物に手伝いなど不要。ラズリを癒すために働いてもらう。

 舌なめずりをして朝食を味わうシロを横目に、俺も食べ進めた。


「美味しいけど……ちゃんとした家も欲しいなぁ」

「ニーグリ様、お家は無いのですか?」

「家がなくても問題ないから持ち合わせてないんだよな。……というか、衣食住の〝衣〟もまだダメじゃないか!?」

『確かに、一理あるな』

『コケ?』


 髪の毛はボサボサだし前髪で目が隠れている。それに服は所々破れている。これでは充実しているとはいないだろう。


「よし、朝食を食べ終えたらラズリの髪を綺麗にして前髪を散髪、その後に服を調達しよう。髪は俺がなんとかできる!」

「あ、ありがとうございますニーグリ様。でも、服はどうやって調達するのですか?」

「そこが問題なんだよな!」

「はじめの一歩が踏み出せませんね……」


 うーんと唸りながら悩んでいると、シロが話に入ってくる。


『それならば友人を紹介しよう。人間物の服を作るのが趣味な奴がおる』

「シロ……お前有能だなぁ! よしゃよしゃ!」

「すごいですシロ! いっぱい撫でてあげます!」

『あ、そ、そこは撫でる出ないわっ! わふんっ♡』


 当てはあるらしいので、シロを信じてみよう。

 良い気分のまま、俺たちは朝食を食べ進めた。

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