2023/12/25
優太くんを見守る琥珀さんはまさしくそれだ。辛抱強く待ち、
こうやって一緒に過ごしているとつい先日まで一緒になってフィギュアスケートの大会を目指していたのが嘘みたいだ。楽しかったけれど、どこか緊張続きで気が抜けないところがあった。それがゆったりな時間を過ごせている。それは美鶴にとっては不思議なことだった。
琥珀さんと一緒ってことはスケートを滑ってるってことと同意義だったのに、今はボードゲームだ。なんだか不思議な気持ち。
「琥珀さん。また遊びに来ましょうね」
だから、そう約束しておかないと二度とこの時間が訪れない気がして、つい口から出た。
「なあに急に。もちろんよ。優太も気に入ったみたいだし店長さんさえよかったらちょくちょく来たいよね」
なんだかそう言ってもらえてホッとする。何に不安になっているんだ自分はと、美鶴は自問自答する。するとカバンの中でスマホが震えたのが分かった。ちょっと気になることがあったので、気にしていたのだ。
案の定、気にしていた相手からの連絡でちょっと胸が踊るのが分かる。
友人である
早く、くっつけばいいのに。
それが春と、としくんを知っているみんなの共通認識なのだが、なぜか本人たちにその自覚がない。それがようやくクリスマス・イヴにふたりっきりで会うというのだ。期待しないほうがおかしい。
さて。どうなったのか。ワクワクしながらスマホを手にして画面を開く。
『としくんから告白っぽいことされたんだけど、どうしよう!』
どうしようって。どうもなにもない気がするが、春らし言っちゃ春らしい。だってずっと待ってたんじゃないの? そう思う。
とりあえず店長に見せに行けばいいか。店長もずっと気にしてたことだ。
「美鶴ちゃんどうしたの? 嬉しそうにして」
「春が告白されたって報告してきたんでつい、嬉しくって」
「告白? なにそれ。楽しそうなんだけど」
琥珀さんの瞳が少女みたいに輝いている。琥珀さんも恋バナしたいんだな。なんて妙な感想を抱く。
「できた!」
優太くんも元気にナインタイルを完成させている。すっかりこのゲームがお気に入りみたいだ。クリスマスプレゼントにこの後、購入してプレゼントしちゃおうかな。明日、サンタさんからのプレゼントに混ぜてもらおう。
それが妙案な気がしてきた。ナインタイルにも種類がある。コラボ商品なんかも出ているからキャラクターの絵柄でもいいかもしれない。
「なんか。クリスマスっぽいの久しぶりかも」
琥珀さんがしみじみしている。
「来年も一緒に過ごしましょ? クリスマス」
それは楽しみだ。
琥珀さんも優太くんも笑って頷いてくれる。来年のクリスマスもきっとこのセカンドダイスは賑やかなのだ。
セカンドダイスの日常 アドベントカレンダー2023 霜月かつろう @shimotuki_katuro
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