2023/12/19
「ねえ。これなんてどうかな?」
美鶴が差し出してきたのは手のひらに乗るくらい小さな箱。記号が描かれていて左下に小さくナインタイルと描かれている。貴子は知ってはいるけれど遊んだことはないゲームだ。考えることもあるけれど、どちらかと言うとスピードを争うゲームで貴子の苦手な分類だったりするのだ。
「ナインタイルですか。ちょっと難しいかなって思いますけど。優太くんに出来ますかね?」
さっきの様子を見ていたらちょっと出来ないんじゃないかと思ってしまう。
ルールは簡単で名前の通り九枚のタイルを使う、パルズの様なゲームだ。お題が公開されそれに従って手元の九枚のタイルを裏返したり動かしたりしながらお題通りの配置に並べるゲームだ。タイルに描かれている絵柄は六種類あって、九枚のタイル、表裏それぞれに描かれている。当然同じ絵柄がいくつかのタイルに描かれているが、その組み合わせをしっかりとしないとお題通りに並べることが出来ないのだ。
その組み合わせはたくさんあってそれをきちんと揃えるまでの時間を競う。それが優太に出来るのだろうかと悩んでしまう。
「多分大丈夫。ちょっとルールからは外れるけれど、指示された通りに動かなきゃいけないっていうのは出来るんじゃないかな」
美鶴はなんだか自信がありそう。どこからその自信が生まれるのか気になるところだ。
「えっとね。先に貴子さんには說明しとくね。最初は競うんじゃなくてこの絵柄通りに並べられることを優太くんにやってもらえばいいと思うの。さっきやったステッキーとかベルズとかってルールが視覚的に分かりにくいじゃない? 棒を抜くのは色とか使ってて分かりやすかったりするんだけど。ルールってことになると、棒や鈴自体にはなんの情報もないの。でも、ナインタイルは視覚的にルールを說明してくれている。だって、絵柄通りに並べなきゃいけないの。それなら優太くんもゲームに集中できると思うのよ」
まあ。そうなのかもしれない。与えられた図のとおりに並べる遊びなのだ。揃っていく様子は視覚的に楽しめるのかも?
「それでやってましょう。なんだか行ける気もします」
やってみなければ分からない。見本を見せながらでもいい。とにかく今は優太と一緒に遊ぶことが大切なのだ。少しずつ違った方向から試すしか無い。今一度、優太とのボードゲームに挑もう。貴子はそう息巻いて琥珀と優太がいるテーブル向かった。
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