2023/12/18

「貴子さんは最近、気になってるゲームはあった?」


 美鶴と一緒にセカンドダイスの棚をぐるりと見渡していたが、なんだか決めきらなくて、ついにはそう聞かれた。相当悩んでる証拠。なんだか琥珀と優太のことも気になってしまって定まらなくなってしまった。どのゲームを見ても優太の顔がチラついて決めきれない。


 その優太は琥珀と一緒にベルズで遊んでいる。と言ってもさっきまで同じで大量の鈴を磁石にくっつけて落としての繰り返してるだけだ。


 うん。気を取り直して美鶴と遊ぶゲームを探そう。それはそれでちょっとした悩みもある。中学へ上がって、ちょっとだけ忙しくなった。勉強だったり、部活だったり、あとは友達と遊んだり。実のところボードゲームから少しだけ離れてしまったのだ。中学の友達をボードゲームに誘ったりはまだ出来ないし、するつもりもない。


 遊ぶものは他にもたくさんある。ボードゲームである必要はない。最近の貴子はそう思っている。


 だから、最近の気になるゲームもチェックしきれていなかったりするのだ。美鶴の質問にすぐに答えられないのもそれが原因だ。それでも遊びたいゲームが一個もないわけでもない。


「ウルブズとかですかね」


 狼の群れを移動したり戦ったりしながら群れを取り合うゲームだ。ひとりでは最適解は導き出しにくく誰がどう動くかを警戒しながら慎重に行動し続ける。


「あー。千尋ちゃんがやりたいって言ってたかも。なんか真面目に勝負することになるから覚悟しておいてって言ってた気がする。確かに気になるね。でも、ふたりだと難しそう?」


 そうなのだ。ふたりで遊べないこともないが五人まで遊べるゲームで誰が誰に仕掛けるかが大事なゲームでふたりで遊ぶのはガチガチに争うことになってしまう。久しぶりに美鶴と遊べるのにそれは避けたかった。


「ええ。難しいと思います。それに長い時間ふたりを放っておくことになりそうなので」


 美鶴が誘ってふたりがここにいるのだろう。そこを邪魔するわけにもいかない。


「うん。やっぱり貴子さんはボードゲーム好きだよね。優太くんにも楽しんで欲しんでしょ? それもちゃんとボードゲームで」


 驚いてつい、そのまま頷いてしまう。


「なんで分かるんですか」

「分かるよー。これまでたくさん一緒に遊んだからね。でも、そういうことならその方向で一緒に考えよっか」


 琥珀と優太はまだ楽しそうにしている。なのでこちらも存分に時間を使わせてもらおう。美鶴とふたりで大量に並んだボードゲームとにらめっこを始めた。

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