2023/12/14
カフェなのに壁一面にいろんな箱が置かれている。初めてまじまじと見るそのお店に戸惑いを覚えつつも案内されるがままに椅子に座った。
セカンドダイスと言う名前のその場所はボードゲームカフェと呼ばれる所だ。ボードゲームと言うのは電源を使わないアナログで遊ぶゲームのことを大雑把に指すと
そんな美鶴ちゃんの動きが気になるのか優太はあとを追っかけている。不用意にお店のものを勝手に触らないか心配でしょうがない。美鶴ちゃんから紹介されて訪れた店で粗相だけは勘弁してほしいのだけれど。
「琥珀ちゃんだったね。店長の
太田さんと言うのは
人が良さそうなちょっと太めの身体を揺らしながら去っていく背中を眺める。解答さんががっちりなら太田さんはゆったりって感じだ。身長差もあってふたりが並んだら中堅のお笑いコンビに見えなくもない。というかいるよ、探せばきっと。どっちがツッコミでどっちがボケか。見た目では海藤さんがツッコミなんだけど、あれでいて抜けているところも多い。やっぱり海藤さんはボケだな。
おっと。無用な考えばかり浮かんでしまって、優太から目を離し過ぎた。ついこの前までひとりで見ていたのに、だんだんと見てくれる人が増えていく中で油断するタイミングも増えた。気を引き締めないといつかミスをしてしまいそうで怖くなる。
「ほら。優太くん。これなんてどうかな、サイコロでを振って出た色の棒を倒れないように抜いていくんだよ。これなら一緒に出来るかな?」
黄色い箱を手に美鶴ちゃんが優太に一生懸命、説明している。優太は理解した気になってうなずいているけれど、本当に分かっているのだろうか。そもそもサイコロを触らせたことってあったっけか。琥珀自身もサイコロなんて単語を久しぶりに聞いた。すごろくでもしない限り使わないよなサイコロって。そんなことをぼんやりと思っていたら優太が美鶴ちゃんに渡された先程の黄色い箱を持ってきた。
「これやるっ!」
「分かった。分かった。遊ぶからこっちおいで」
テーブルは子どもには高いものなので膝の上に乗せてあげる。徐々に重くなっていく息子をいつまでここに置けるの考えてしまったりもする。
「はーい」
今のところ素直に育っている優太は持ってきた箱を上手に開けられなくて苦戦している。
「開けて!」
「はいはい」
そう琥珀は箱を受け取って開けようとするがしっかりと閉まっていて中々空いてくれない。丈夫に出来てるのだなぁ。なんて妙なところに感心する。覚えている人生ゲームの箱なんかはすぐに潰れてしまったような気がするよ。
優太に邪魔されながら、箱を開けると三色の棒と輪っかがひとつにさいころがひとつ。さいころに数字は書いてなくて変わりに丸い色が描かれている。赤、青、黄の三色だ。棒と同じ色。
先程の美鶴ちゃんの説明と合わせてなんとなくゲームのルールが理解できた気がする。
ふむふむ。中々ワクワクできそうじゃない。久しぶりの感覚に楽しくなってきた琥珀だった。
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