2023/12/09

 俊彰は結局ひとりで寝たきりの週末を過ごした。その間の記憶は曖昧だ。ただただ辛かっただけの様にも思うし、ひたすらに悪夢を見続けていた様にも思う。ゲームマーケットにいけないことで妙にリアルな夢も見た気がする。その夢の中では確かに春への告白が失敗したりもした。でも、それらの記憶も全部曖昧で時間が経てば忘れてしまうようなこと。


 その間は家から一歩も出る気になれず、買い込んだ食料もつき始め、なんとか身体を動かせるようになったころ。春からの連絡があった。


 電話じゃない。メッセージが送られてきただけだ。そこにはゲームマーケットの楽しそうな画像も添付されており、それを見て申し訳ない気持ちと行けなかったことへの悔しさがこみ上げえてくる。


 でも、最も大きかったのは行き場を失った想い。


 春への告白へ一直線に向かっていた気持ちがふわふわと体の中を浮かんでいる。それも風船みたいに徐々に小さくなりながら。考えれば考えるほど、その想いをどうしていいのか分からなくなる。


 いまさら急に呼び出して告白? 好きであればするべきだろう。でも、タイミングを失ってどうすればいいのか見当もつかない。ようするに熱が冷めてしまったのだ。ゲームマーケットと言うイベントをきっかけにした告白なんて、所詮はイベントの熱に乗っかっただけの告白。真に迫るものなんてなかったのかもしれない。


 セカンドダイスのバイトも休みをもらい続けている。大学だって休んだ分を取り戻さなくてはならない。やらなければならないことは山積している。春の事ばかり考えてもいられない。


 春からのメッセージを読み返す。


『としくん。具合大丈夫? 今日のゲムマ来られなかったのは本当に残念。代わりに面白そうなゲームをたくさんゲットしておいたよ。元気になったら一緒に遊ぼうね』


 そこにボドゲ仲間と言う関係以上のものが見出せなくて。智也先輩の言っていることとか含めて春の気持ちがまったく分からなくなってしまった。


 もっと心配してくれるものだとか、万が一にも心配して訪れてくれたりとか、そんな甘いことばかり想像して、勝手に打ち砕かれた気になっている。


 なんだか、疲れてしまったのだ。身体をよくするのにエネルギーを使ってしまったみたいに、心も同時にエネルギーを消費してしまったみたいな感覚。


 明日から元の生活に戻る。それだけできっと精一杯。春への告白のことは一旦忘れよう。


 眠くないけれど、起き続けてまた体調が悪くなってもいけないので、俊彰は嫌なことばかりを考える自分を消し去るように無理やり眠りについた。

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