2023/12/07

 俊彰は昨日の事を思い出してどうしてもニヤニヤしてしまう。春との食事兼ゲームマーケットの打ち合わせは盛り上がった。どのゲームが気になるのかカタログに載っているサークルカットを眺め。目に留まるものがあったらSNSで検索をして発信している情報を詳しく調べた。


 そうして、気になったものにチャックを入れて当日の購入リストを作っていった。気が付いたら十個以上なんてあっという間で。全てを購入するのは金銭的に厳しくなっていた。


 そこからどうしても欲しいものをさらに絞り込んでいったりしていたら、ついつい夜遅くまでかかってしまい。春を家まで送っていった。家の前で『当日楽しみにしてるね』。そう言い残した春の顔を思い浮かべては消しての繰り返し。


 セカンドダイスでのバイトがなくて幸いだった。あったら、店長辺りにそのことを突っ込まれて聞かれていただろうし仕事も身に入らなかったとすら思う。


 自宅で再びチャックを入れたカタログをひとり眺めながらそんなことを思う。


 正直、自分でも浮かれているのが分かる。ゲームマーケットの後のプランは正直決め切ってはいない。おしゃれなディナーなんて大量のボードゲームを抱えてなんて行けるはずもない。一旦はセカンドダイスへ行かなくてはならい。それは智也先輩も一緒だし、そうなれば千尋さんもついてくる。そうなれば、ほかの人たちだって一緒だ。


 であれば、ゲームマーケットが終わった直後。会場である逆三角形の前と言うのはどうだろうか。ロマンチックのかけらもないけれど、それがおさまりが良い気がした。


 大量のボードゲームを両手の袋一杯にしての告白。


 良し悪しは別として思い出には残りそうだ。


 そんなことをしたら失敗してしまうだろうか。いや。きっと大丈夫。そう言い聞かせる。これだけいい感じなのだから大丈夫。何度も言い聞かせる。


 するとスマホが鳴った。ディスプレイを見ると春からで慌てて手に取る。


「もしもし」

『あっ。としくん。昨日、見逃しちゃったサークルさんがあってさぁ。今から言うところにチェック付けてくれないかな』


 熱心なことだ。いや、もしかしたら、話をしたくて連絡をしてくれたなんてことは……。


「チャックしました」

『あれ? なんかとしくん声おかしくない? どったの? 体調でも悪い?』


 言われてみて、先ほどまで何度かせき込んでいたのを思い出す。その時は気にも止めていなかったのだけれど、確かに喉の奥がむず痒い。


「なんか調子悪いかもしれないです」

『ちょっと。しっかりしてよね。今日は早く寝て元気になってよね。長電話もよくないから、今日はこの辺にするから。じゃあ、おやすみ』


 ちょっと残念だけれど電話を切って、大人しく寝る準備をする。しばらくすると、少しせき込んでしまった。


 急に不安が押し寄せてくる。大丈夫だよな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る