第246話 名付けの儀式

 魔王さまの城の中、とある一部屋をお借りして、儀式を始める。内容は、私に“真名”を付けるための儀式だ。

 ゼスは部屋の中央に魔力によって魔法陣を描き、そこに私を立たせる。そしていくつかの難しい古代語の呪文を唱えてから、私に対しておごそかに告げる。


「汝、我の魔力をもって真名にて刻み込まん。ゆめゆめ忘れるなかれ。汝の力は名と共にある事を。汝の名は、『リリカ・アーウェント・ギギ・ホロヴウウ』なり」


 私の身体が魔力の光に包み込まれ、そして消えていった。ほんのわずかの時間であったにせよ、魔力を感知できたのは私にとっても収穫だ。

 そして真名を得た身なのだが、あまり変化を感じない。少し身体が軽くなったような気がしただけだ。「まあこんなものか」と思って、とりあえずゼスに尋ねてみる。

「これで終わり……かな?」

「うむ。これで晴れて、正式な仲間入りじゃな。それと真名は他人には明かすなよ。どんな事になるやら、わからんからのぅ」


 私は神妙な面持ちでうなずいた。人間には無い魔族特有の縛りがあるようなので、そこはおいおい聞いておこう。


「さて、そろそろ帰ろうかの。我らが廃城に」

「そうね。ずいぶん長居をしてたように感じるわ」

 これにて終了。後は帰るだけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る